流関数

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流体の流れを計算したかったらナビエ・ストークス方程式を解けばOKです。しかし、ナビエ・ストークス方程式は単純ではないので解くのは困難です。ですから、どうしても数値解析が必要になります。ただ、昔はコンピュータが無かったので数値解析は使えません。そこで、単純な例に限定して方程式を解くということをしていました。その際に複素解析が利用されてきました。ここでは、その準備として流関数について解説します。

流関数とは

いま流れ場が

 (u(x,y,z,t),v(x,y,z,t))

となる2次元の非圧縮性流体の流れ場を考えます。つまり、2次元の水の流れのようなものを考えます。この流れ場のある場所(x,y,z)に浮きをおいてみます。このうきが少し時間たち

 (dx,dy)

だけ移動したとします。この変位は位置(x,y)の流れ場と平行なので

 \displaystyle\frac{dx}{u}=\frac{dy}{v}

が成り立ちます。すなわち

 -vdx+udy=0

となります。どれくらい時間が経ったかの条件がないので、これだけでは具体的な(dx,dy)の値はわかりません。しかし、どの方向へ移動したかは先程の式から計算することができます。先ほどの式を見ていると、2変数関数の全微分を思い出します。すなわち

 \displaystyle d\Psi =\frac{\partial\Psi}{\partial x}dx+\frac{\partial\Psi}{\partial y}dy=-vdx+udy=0

です。この関数\displaystyle\Psi(x,y)を流関数といいます。以下に定義をまとめます。

流関数

ある定常な2次元非圧縮性流体の流れ場があり、流速ベクトルを(u(x,y),v(x,y))とする。このとき

 \displaystyle u=\frac{\partial\Psi}{\partial y},\\v=-\frac{\partial\Psi}{\partial x}

を流関数あるいは流れ関数、流線関数と呼ぶ。

 流関数は速度ベクトル(u,v)の代わりに使用することができます。すなわち、流関数がわかっていれば、任意の点の流速を計算できます。

 \Psi(x,y)=xy

なら、

 \displaystyle u(x,y)=\frac{\partial\Psi}{\partial y}=x,\\v(x,y)=-\frac{\partial\Psi}{\partial x}=-y

となります。

流関数が一定な値を結ぶと流線になる

いま流関数\Psi(x,y)が一定になるような線を考えます。関数が一定なので

 \displaystyle d\Psi=\frac{\partial\Psi}{\partial x}dx+\frac{\partial\Psi}{\partial y}dy=0

となります。流関数の定義から

 -vdx+udy=0

が得られます。これは、うきを置いた際にどのように流れるかを計算する際の方程式にほかなりません。よって、流関数が一定になるように線を引くと、うきが流れる軌跡すなわち流線になります。

流関数が一定になるように線を引くと流線になる

流関数と流量

 いま、流関数\Psi(x,y)について、\Psi=\Psi_{1},\Psi=\Psi_{2}となる2つの流線を考えます。そして、流線上の点A,Bをある線lで結び、それらの間を流れる流量を考えます。

流線と流量

いま、長さdlの線要素(dx,dy)を横切る流量dQは、線要素に直角なベクトルが(dy/dl,-dy/dl)であることから

 \displaystyle dQ=\left(u\frac{dy}{dl}+v\left(-\frac{dx}{dl}\right)\right)dl

となります。流関数の定義より

 \displaystyle dQ=\left(\frac{\partial\Psi}{\partial y}\frac{dy}{dl}+\frac{\partial\Psi}{\partial x}\frac{dx}{dl}\right)dl=\frac{d\Psi}{dl}dl=d\Psi

 が得られます。あとは、線lで積分すれば流量Qを得ることができます。

 \displaystyle Q=\int_{l}dQ=\int_{l}d\Psi=\Psi_{2}-\Psi_{1}

このことから、流線の間に流れる流量は流関数値の差であることがわかります。

流線の間に流れる流量は流関数値の差である

流関数と渦度

続いて流関数と渦度の関係をみていきます。渦度のz軸成分は

 \displaystyle\omega_{z}=\frac{\partial v}{\partial x}-\frac{\partial u}{\partial y}

でした。このことを流関数で表すと

 \displaystyle\frac{\partial^{2}\Psi}{\partial x^{2}}+\frac{\partial^{2}\Psi}{\partial y^{2}}=-\omega_{z}

となります。もし、渦なしの流れなら\omega_{z}=0がいたる点で成り立つので

 \displaystyle\frac{\partial^{2}\Psi}{\partial x^{2}}+\frac{\partial^{2}\Psi}{\partial y^{2}}=0

が得られます。つまり、渦なし流れの場合は、ラプラス方程式を流関数が満たすことになります。

渦なし流れの場合、流関数はラプラス方程式を満たす

著者:安井 真人(やすい まさと)