速度ポテンシャル

力について考えた際、ポテンシャルという概念を導入しました。ポテンシャルを導入することで、位置エネルギーの概念など問題の見通しをよくするのに役立ちました。流体力学では速度ベクトルが出てきます。速度ベクトルも力場と似ているので、ポテンシャルを導入するといいことがあるかもしれません。ここでは、この速度ベクトルのポテンシャルである速度ポテンシャルについて考えます。

速度ポテンシャルの定義

さっそくですが、速度ポテンシャルの定義から入ります。

速度ポテンシャル

速度ベクトル(u,v,w)があり

 \displaystyle\frac{\partial\Phi}{\partial x}=u,\\\frac{\partial\Phi}{\partial y}=v,\\\frac{\partial\Phi}{\partial z}=w

が成り立つとする。このとき\Phi速度ポテンシャルという。

力におけるポテンシャルを理解していれば、すんなり理解できるかと思います。注意ですが、流れ場においては速度ポテンシャルが存在するとは限りません。

速度ポテンシャルが満たすべき条件

 速度ポテンシャルが存在するか調べるために、速度ポテンシャルが満たすべき条件について考察します。まず、流体が非圧縮性流体の場合は、連続の式

 \displaystyle\frac{\partial u}{\partial x}+\frac{\partial v}{\partial y}+\frac{\partial w}{\partial z}=0

がなり立ちます。この式に速度ポテンシャルを代入すれば

 \displaystyle\frac{\partial^{2}\Phi}{\partial x^{2}}+\frac{\partial^{2}\Phi}{\partial y^{2}}+\frac{\partial^{2}\Phi}{\partial z^{2}}=0

が得られます。つまり、非圧縮性流体の場合には、速度ポテンシャルはラプラス方程式を満たすことになります。

速度ポテンシャルの存在条件

どういった場合に速度ポテンシャルが存在するでしょうか?

この問について考えてみましょう。

運動学的な存在条件

いま、速度ポテンシャル\Phiが存在したとします。この時、渦度は

 \displaystyle\omega_{z}=\frac{\partial v}{\partial x}-\frac{\partial u}{\partial y}\\=\frac{\partial^{2}\Phi}{\partial x\partial y}-\frac{\partial^{2}\Phi}{\partial y\partial x}=0

となります。x,y成分も同様に零となります。よって、速度ポテンシャルが存在すれば渦度は零になります。

 

では逆に、渦度が零なら速度ポテンシャルは存在するでしょうか。この問について考察します。まず、渦度が零なので

 \displaystyle\frac{\partial u}{\partial y}=\frac{\partial v}{\partial x},\\\frac{\partial v}{\partial z}=\frac{\partial w}{\partial y},\\\frac{\partial w}{\partial x}=\frac{\partial u}{\partial z}

が成り立ちます。そして、

 \displaystyle\Phi(x,y,z)=\int_{O\to P}udx+vdy+wdz

と関数を定義します。この関数は渦度が零という条件のため、経路に依存しません(以下のメモ参照)。

いま、OからPへの2つの経路C_{1},C_{2}があるとします。そして、PからC_{1}を通りOへいきC_{2}を通りPへ戻る経路をCとします。そして、ストークスの定理より

 \displaystyle\int_{C}udx+vdy+wdz=\int_{S}\nabla\vec{u}\cdot d\vec{S}=\int_{S}\vec{\omega}\cdot d\vec{S}=0

となります。ここで、Sは経路Cの面で、\vec{\omega}は渦度ベクトルです。上記の式を変形すると、

 \displaystyle\int_{C}udx+vdy+wdz=\int_{C_{2}}(udx+vdy+wdz)-\int_{C_{1}}(udx+vdy+wdz)=0\\\Leftrightarrow \int_{C_{1}}(udx+vdy+wdz)=\int_{C_{2}}(udx+vdy+wdz)

が成り立ちます。以上のことから、経路に依存しないことが証明されました。

そして、関数\Phiを偏微分すると

 \displaystyle\frac{\partial\Phi}{\partial x}\\=\lim_{dx\to 0}\frac{\Phi(x+dx,y,z)-\Phi(x,y,z)}{dx}\\=\lim_{dx\to 0}\frac{\int_{(x,y,z)\to(x+dx,y,z)}udx}{dx}=u(x,y,z)

となります。同様にして、\frac{\partial\Phi}{\partial y}=v,\frac{\partial\Phi}{\partial z}=wが成り立つので、\Phiは速度ポテンシャルになります。

速度ポテンシャルがあれば渦なしであり、逆に渦なし流れなら速度ポテンシャルが存在する

 力学的存在条件

上記の考察から、渦なし流体において流れ場を知りたければラプラス方程式を解けばいいことになります。ただ、流体の流れ場を知るだけでは、流体における圧力を計算することはできません。そこで、速度ポテンシャルから圧力を計算する方法について考えていきます。圧力は力学的なものなので運動方程式を考える必要があります。流体がオイラーの運動方程式に従うとすれば、

 \displaystyle\frac{\partial\vec{v}}{\partial t}+\vec{\omega}\times\vec{v}=\vec{F}-\frac{1}{\rho}\nabla p-\nabla\left(\frac{1}{2}q^{2}\right)

が成り立ちます。いま、渦なしで速度ポテンシャル\Phiをもつ流れを考えているので

 \displaystyle\frac{\partial}{\partial t}\nabla\Phi=\vec{F}-\frac{1}{\rho}\nabla p-\nabla\left(\frac{1}{2}q^{2}\right)

となります。いま、外力がポテンシャルを持つとし、流体がバルトロピー流体であるとすれば

 \vec{F}=-\nabla\Pi

 \displaystyle\frac{1}{\rho}\nabla p=\nabla P=\nabla\int\frac{dp}{\rho}

なので

 \displaystyle\nabla\frac{\partial\Phi}{\partial t}=-\nabla\left(P+\frac{1}{2}q^{2}+\Pi\right)

が得れます。この式を積分すれば

 \displaystyle\frac{p}{\rho}=-\left(\frac{\partial\Phi}{\partial t}+\frac{q^{2}}{2}+\Pi\right)+F(t)

より圧力を計算することが可能となります。ここでF(t)は積分定数です。

著者:安井 真人(やすい まさと)