脂質

 脂質ときくと、脂肪を連想しダイエットの天敵!?と思われる方も多いかもしれません。しかし、脂質は生体にとって欠かせない物質の一つであり、大切な物質です。例えば、細胞膜の主要物質が脂質に当たりますし、細胞における情報伝達にも使用されています。ここではこの脂質がどのようなものかや単純脂質や複合脂質について解説します。

脂質とは

 脂質とは、生物体から単離されて水に解けない物質の総称です。ある特定の化学物質を指すわけではないので注意しましょう。エーテル、クロロホルムやベンゼン等の有機溶媒に溶けます。脂質はいかに述べる単純脂質と複合脂質に分類できます。

単純脂質

  単純脂質とは脂肪酸とアルコールがエステル結合したものです。いきなり脂肪酸とかアルコール、エステル結合といわれてもわからないと思うので、これら3つについてはじめに解説します。

脂肪酸

 まず、脂肪酸についてですが、R-COOHの形をした分子のことです(つまり一価のカルボン酸のこと)。ここで、Rは炭素鎖のことです。COOHはカルボキシル基といい以下の様な構造をしています。

カルボキシル基

 カルボキシル基は水溶液中で以下のように一部が電離し、溶けます。そして、水素イオンが水溶液中に解けるため、弱酸になります。

 R-COOH\rightleftharpoons R-COO^{-}+H^{+}

アルコール

 アルコールはR-OHの形をした分子のことです。生体内ではアルコールとしてグリセリンがよく使用されます。アルコールの部分がグリセリンの場合の単純脂質を中性脂肪グリセロール、またはグリセリドと呼びます。グリセリンとは以下の様な構造をもつ化合物のことです。

グリセリンの構造

この3つのOH基と脂肪酸とが結合し、中性脂肪になります。OH基のうち脂肪酸と結合している場合は、1つ(モノグリセリド)、2つ(ジグリセリド)、3つ(トリグリセリド)が考えられます。生体内では、多くが3つのOH基に脂肪酸が結合しています。

単純脂質

単純脂質の吸収

 単純脂質は、アルカリ処理やすい臓や胃にあるリパーゼという酵素によって分解されます。分解の結果、2つの脂肪酸と1つのモノグリセリドができます。単純脂質(脂肪)はエネルギーを蓄えるのに効率のいい物質です。そのため、栄養が豊富な際は単純脂質でエネルギーを蓄えて、飢餓へ備える仕組みになっています。しかし、最近では常に栄養豊富な状態なため、単純脂質が蓄えられすぎ肥満になるということが社会問題となっています。

複合脂質

 リン酸や糖などの成分を含む脂質を複合脂質といいます。

 リン脂質

 分子構造にリン酸エステル部位をもつ資質をリン脂質といいます。リン脂質は細胞膜の主要な成分となっています。膜をつくる仕組みは以下のようになります。まず、リン脂質には水に溶けやすい水溶基と水に溶けにくい疎水基があります。以下にリン脂質の例であるホスファチジルコリンの分子構造をのせます。

ホスファチジルコリンの分子構造(Wikipediaより)
ホスファチジルコリンの分子構造(Wikipediaより)

 脂肪酸の部分が疎水基で、コリンの部分が親水基になっています。コリンとは以下の様な構造をした化合物です。

コリン

疎水基は疎水基どうしで集まり、親水基は水や親水基どうしが集まります(このほうがエネルギー的に安定なため)。その結果、以下のように厚さ10nm程度の脂質二重層が形成され膜が形成されます。

脂質二重層

糖脂質

 糖を結合した脂質を糖脂質といいます。糖脂質は細胞膜や細胞小器官に存在し、細胞の認識に使用されます。例えば、血液型は、赤血球の細胞膜にある糖鎖の違いで分類されます。

非ケン化物

 酸やアルカリで加水分解されないような脂質を非ケン化物といいます。ここでケン化とはアルカリでエステル結合を分解することです。このことから、非ケン化物はアルカリで分解できない脂質という意味がわかるかと思います。非ケン化物には、脂溶性ビタミンやステロイドなどがあります。

著者:安井 真人(やすい まさと)