キルヒホッフの法則

光

 前回オームの法則を金属電子の簡単なモデルから導きました。ここでは、オームの法則を利用して、電子回路の計算をしてみましょう。でもその前に、キルヒホッフの法則を知る必要があるので説明します。

キルヒホッフの第一法則

キルヒホッフの第一法則は、「電荷はわきでてこない」という法則です。財布の中のお金はお金をいれないと増えないのと同じことです。図の場合だと

 I_{1}+I_{2}+I_{3}+I_{4}+I_{5}+I_{6}=0

となります。

キルヒホッフの第一法則

キルヒホッフの第二法則

回路を一周したら、電位はゼロになるという法則です。言い換えると

(閉路内の起電力の和)=(閉路内の電圧降下の和)

キルヒホッフの第二法則となります。

実際に問題を解いてみましょう。以下の回路のそれぞれの抵抗に流れる電流と電圧を計算してください。

回路

まずはわからない電圧や電流を文字で図のようにおきます。

回路

あとは

  1. オームの法則
  2. キルヒホッフの第一法則
  3. キルヒホッフの第二法則

を適応していくだけです。

オームの法則

オームの法則を適応すると

 V_{1}=RI_{1},V_{2}=RI_{2},V_{3}=RI_{3}・・・(1)

となります。

キルヒホッフの第一法則

回路中央にある分岐点で使うと

 -I_{1}+I_{2}+I_{3}=0・・・(2)

となります。他にも分岐点はありますが、今回の場合はこの式と同じ式が得られるだけです。

キルヒホッフの第二法則

今回は閉路が二つあるので、それぞれにキルヒホッフの第二法則を適応します。

【閉路1】V-V_{2}-V_{1}=0・・・(3)

【閉路2】-V_{3}+V_{2}=0・・・(4)

キルヒホッフの第二法則

あとは連立方程式を解くだけです。式を行列でまとめると

 \displaystyle \left(\begin{array}{cccccc}1&0&0&-R&0&0\\0&1&0&0&-R&0\\0&0&1&0&0&-R\\0&0&0&-1&1&1\\1&1&0&0&0&0\\0&1&-1&0&0&0\end{array}\right)\left(\begin{array}{c}V_{1}\\V_{2}\\V_{3}\\I_{1}\\I_{2}\\I_{3}\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c}0\\0\\0\\0\\V\\0\end{array}\right)

となります。ではガウスの消去法で解いていきます。

 \displaystyle \left(\begin{array}{cccccc|c}1&0&0&-R&0&0&0\\0&1&0&0&-R&0&0\\0&0&1&0&0&-R&0\\0&0&0&-1&1&1&0\\1&1&0&0&0&0&V\\0&1&-1&0&0&0&0\end{array} \right)

 \displaystyle \rightarrow\left(\begin{array}{cccccc|c}1&0&0&-R&0&0&0\\0&1&0&0&-R&0&0\\0&0&1&0&0&-R&0\\0&0&0&-1&1&1&0\\0&0&0&R&R&0&V\\0&0&0&0&R&-R&0\end{array}\right)←5行-1行-2行、6行-2行+3行

 \displaystyle \rightarrow\left(\begin{array}{cccccc|c}1&0&0&-R&0&0&0\\0&1&0&0&-R&0&0\\0&0&1&0&0&-R&0\\0&0&0&1&-1&-1&0\\0&0&0&1&1&0&\displaystyle\frac{V}{R}\\0&0&0&0&1&-1&0\end{array}\right)←4行×(-1),5行/R,6行/R

 \displaystyle \rightarrow\left(\begin{array}{cccccc|c}1&0&0&0&-R&-R&0\\0&1&0&0&-R&0&0\\0&0&1&0&0&-R&0\\0&0&0&1&-1&-1&0\\0&0&0&0&2&1&\displaystyle\frac{V}{R}\\0&0&0&0&1&-1&0\end{array}\right)←1行+R×4行,5行-4行

 \displaystyle\rightarrow\left(\begin{array}{cccccc|c}1&0&0&0&-R&-R&0\\0&1&0&0&-R&0&0\\0&0&1&0&0&-R&0\\0&0&0&1&-1&-1&0\\0&0&0&0&1&-1&0\\0&0&0&0&2&1&\displaystyle\frac{V}{R}\end{array}\right)←5行と6行を入れ替え

 \displaystyle\rightarrow\left(\begin{array}{cccccc|c}1&0&0&0&0&-2R&0\\0&1&0&0&0&-R&0\\0&0&1&0&0&-R&0\\0&0&0&1&0&-2&0\\0&0&0&0&1&-1&0\\0&0&0&0&0&3&\displaystyle\frac{V}{R}\end{array}\right)←1行+R×5行,2行+R×5行,4行+5行,6行-2×5行

 \displaystyle\rightarrow\left(\begin{array}{cccccc|c}1&0&0&0&0&-2R&0\\0&1&0&0&0&-R&0\\0&0&1&0&0&-R&0\\0&0&0&1&0&-2&0\\0&0&0&0&1&-1&0\\0&0&0&0&0&1&\displaystyle\frac{V}{3R}\end{array}\right)←6行/3

 \displaystyle\rightarrow\left(\begin{array}{cccccc|c}1&0&0&0&0&0&\displaystyle\frac{2V}{3}\\0&1&0&0&0&0&\displaystyle\frac{V}{3}\\0&0&1&0&0&0&\displaystyle\frac{V}{3}\\0&0&0&1&0&0&\displaystyle\frac{2V}{3R}\\0&0&0&0&1&0&\displaystyle\frac{V}{3R}\\0&0&0&0&0&1&\displaystyle\frac{V}{3R}\end{array}\right)

よって、

 \displaystyle \left(\begin{array}{c}V_{1}\\V_{2}\\V_{3}\\I_{1}\\I_{2}\\I_{3}\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c}\displaystyle\frac{2V}{3}\\ \displaystyle\frac{V}{3}\\ \displaystyle\frac{V}{3}\\ \displaystyle\frac{2V}{3R}\\ \displaystyle\frac{V}{3R}\\ \displaystyle\frac{V}{3R}\end{array}\right)

が答えとなります。

オームの法則とキルヒホッフの法則により、回路の問題が解けることがわかっていただけたと思います。

著者:安井 真人(やすい まさと)