両端に質点のついた棒の運動

両端に質点のついた棒の運動

両端に質点がついている棒を考えることで、物体の回転運動を解析することができます。

 

棒は回転するか

いま図のように二つの質点A,Bがあるとします。

二つの質点AとBは棒でつながっており、この棒は質量を持ちません。

そして質点にはそれぞれある方向へ力が加わっています。

では、この棒がどのような力を加えると並進運動するのかやくるくる回るかについて考えます。

 

質点A,Bの質量をそれぞれm_{a},m_{b}とし、外部からかける力を\vec{F}_{a}^{(e)},\vec{F}_{b}^{(e)}とします。

もちろん棒を通じて質点どうしが力のやり取りができます。

そこで、質点Bが質点Aヘ与える力を\vec{F}_{ab}^{(i)}とし

質点Aが質点Bへ与える力を\vec{F}_{ba}^{(i)}とします。

 

すると作用反作用の法則より

 \vec{F}_{ab}^{(i)}=-\vec{F}_{ba}^{(i)}・・・(1)

が成り立ちます。

また、\vec{F}_{ab}^{(i)},\vec{F}_{ba}^{(i)}と質点A,Bの位置ベクトルの差\vec{r}_{a}-\vec{r}_{b}は平行になります。

なぜならもし平行にならないと、外力を加えていないにもかかわらず勝手に棒が回転してしまうからです。

 

よって、勝手に回転しないための条件は外積をつかって

 (\vec{r}_{a}-\vec{r}_{b})\times\vec{F}_{ab}^{(i)}=\vec{0}・・・(2)

となります。

並進運動における棒の運動方程式の導出

では、2つの質点がついた棒の運動方程式を導出していきます。

これにより、この棒の位置ベクトルや質量を定義していきます。

 

そのために、まず2つの質点の運動方程式を立てると

 m_{a}\ddot{\vec{r}}_{a}=\vec{F}_{a}^{(e)}+\vec{F}_{ab}^{(i)},

 m_{b}\ddot{\vec{r}}_{b}=\vec{F}_{b}^{(e)}+\vec{F}_{ba}^{(i)}

となります。これらの式をたすと

 m_{a}\ddot{\vec{r}}_{a}+m_{b}\ddot{\vec{r}}_{b}=\vec{F}_{a}^{(e)}+\vec{F}_{b}^{(e)}

となります。ここで、作用反作用の法則(1)を使いました。

 

ここで外部からかかる力を

 \vec{F}^{(e)}=\vec{F}_{a}^{(e)}+\vec{F}_{b}^{(e)}

とまとめると

 m_{a}\ddot{\vec{r}}_{a}+m_{b}\ddot{\vec{r}}_{b}=\vec{F}^{(e)}

となります。

左辺を運動方程式の形M\ddot{\vec{r}}の形におきたくなります。

とりあえずMは質点A,Bの合計にするのが合理的でしょう。よって、

 M=m_{a}+m_{b}

と置きます。すると\vec{r}

 M\ddot{\vec{r}}=m_{a}\ddot{\vec{r}}_{a}+m_{b}\ddot{\vec{r}}_{b}

 \displaystyle\Rightarrow \frac{d^{2}}{dt^{2}}\vec{r}=\frac{d^{2}}{dt^{2}}\left( \frac{m_{a}\vec{r}_{a}+m_{b}\vec{r}_{b}}{M}\right)

となるので、

 \displaystyle\vec{r}=\frac{m_{a}\vec{r}_{a}+m_{b}\vec{r}_{b}}{m_{a}+m_{b}}

を棒の重心とするのがよさそうです。

 

以上から質点AとBを合わせた運動方程式は

 M\ddot{\vec{r}}=\vec{F}^{(e)}

であり、

 M=m_{a}+m_{b},\vec{F}^{(e)}=\vec{F}_{a}^{(e)}+\vec{F}_{b}^{(e)},

 \displaystyle\vec{r}=\frac{m_{a}\vec{r}_{a}+m_{b}\vec{r}_{b}}{m_{a}+m_{b}}

です。そして、Mが質点A,Bを合わせた質量で、\vec{r}重心もしくは質量中心といいます。

上記のことから、2つの質点がついた棒の並進運動について理解できました。

しかし、この式を解いても重心の軌道しか計算できません。

つまり、棒の回転運動を理解することはできないのです。

棒の回転についての方程式の導出

回転を計算するために角運動量を使います。

質点A,Bの角運動量はそれぞれ

 \vec{l}_{a}=\vec{r}_{a}\times\vec{p}_{a},\\\vec{l}_{b}=\vec{r}_{b}\times\vec{p}_{b}

となります。

そして、角運動量の和は

 \vec{L}=\vec{l}_{a}+\vec{l}_{b}=\vec{r}_{a}\times\vec{p}_{a}+\vec{r}_{b}\times\vec{p}_{b}

となります。

回転の運動方程式

 \displaystyle\frac{d}{dt}\vec{l}_{a}=\vec{r}_{a}\times\vec{F}_{a}^{(e)}+\vec{r}_{a}\times\vec{F}_{ab}^{(i)},

 \displaystyle\frac{d}{dt}\vec{l}_{b}=\vec{r}_{b}\times\vec{F}_{b}^{(e)}+\vec{r}_{b}\times\vec{F}_{ba}^{(i)}

をそれぞれ足すと

 \displaystyle\frac{d}{dt}\vec{L}=\vec{r}_{a}\times\vec{F}_{a}^{(e)}+\vec{r}_{b}\times\vec{F}_{b}^{(e)}+\vec{r}_{a}\times\vec{F}_{ab}^{(i)}+\vec{r}_{b}\times\vec{F}_{ba}^{(i)},

 \displaystyle=\vec{r}_{a}\times\vec{F}_{a}^{(e)}+\vec{r}_{b}\times\vec{F}_{b}^{(e)}+(\vec{r}_{a}-\vec{r}_{b})\times\vec{F}_{ab}^{(i)}

となります。ここで式(2)

 (\vec{r}_{a}-\vec{r}_{b})\times\vec{F}_{ab}^{(i)}=\vec{0}・・・(2)

を使うと

 \displaystyle\frac{d}{dt}\vec{L}=\vec{r}_{a}\times\vec{F}_{a}^{(e)}+\vec{r}_{b}\times\vec{F}_{b}^{(e)}=\vec{T}_{a}^{(e)}+\vec{T}_{b}^{(e)}=\vec{T}^{(e)}

となります。

 

よって、

 

2つの質点がついた棒の回転運動に関する方程式は

 \displaystyle\frac{d}{dt}\vec{L}=\vec{T}^{(e)}

となります。ここで\vec{T}^{(e)}は外部からの原点周りのトルクで、

 \vec{L}=\vec{l}_{a}+\vec{l}_{b}=\vec{r}_{a}\times\vec{p}_{a}+\vec{r}_{b}\times\vec{p}_{b}

です。

質量中心での角運動量

この角運動量\vec{L}は原点中心の角運動量なので、質点A,Bを合わせた物体が平行移動しているだけでも角運動量が生じることがあります。

質点A,Bが平行移動していて回転していない場合は零ベクトルになってくれた方が何かとわかりやすいです。

 

そこで、原点中心ではなく重心を中心にして角運動量を求めます。

この重心を中心とした角運動量を\vec{L}^{\prime}と置くことにします。

 

計算すると

 \displaystyle\vec{L}^{\prime}=\left(\vec{r}_{a}-\vec{r}\right)\times m_{a}\left(\vec{v}_{a}-\vec{v}\right)+\left(\vec{r}_{b}-\vec{r}\right)\times m_{b}\left(\vec{v}_{b}-\vec{v}\right)

 \displaystyle=m_{a}\vec{r}_{a}\times\vec{v}_{a}-m_{a}\vec{r}_{a}\times\vec{v}-m_{a}\vec{r}\times\vec{v}_{a}+m_{a}\vec{r}\times\vec{v}

 +m_{b}\vec{r}_{b}\times\vec{v}_{b}-m_{b}\vec{r}_{b}\times\vec{v}-m_{b}\vec{r}\times\vec{v}_{b}+m_{b}\vec{r}\times\vec{v}

ここで

 m_{a}\vec{r}_{a}\times\vec{v}_{a}+m_{b}\vec{r}_{b}\times\vec{v}_{b}=\vec{L},

 m_{a}\vec{r}_{a}\times\vec{v}+m_{b}\vec{r}_{b}\times\vec{v}=(m_{a}\vec{r}_{a}+m_{b}\vec{r}_{b})\times\vec{v}=M\vec{r}\times\vec{v},

 m_{a}\vec{r}\times\vec{v}_{a}+m_{b}\vec{r}\times\vec{v}_{b}=\vec{r}\times(m_{a}\vec{v}_{a}+m_{b}\vec{v}_{b})=M\vec{r}\times\vec{v},

 m_{a}\vec{r}\times\vec{v}+m_{b}\vec{r}\times\vec{v}=(m_{a}+m_{b})\vec{r}\times\vec{v}=M\vec{r}\times\vec{v}

より

 \vec{L}^{\prime}=\vec{L}-M\vec{r}\times\vec{v}

が求まります。

 

最終的なまとめ

【並進運動】

M\ddot{\vec{r}}=\vec{F}^{(e)}・・・(A)

M=m_{a}+m_{b},\vec{F}^{(e)}=\vec{F}_{a}^{(e)}+\vec{F}_{b}^{(e)},

\displaystyle\vec{r}=\frac{m_{a}\vec{r}_{a}+m_{b}\vec{r}_{b}}{m_{a}+m_{b}}

【回転運動】

\displaystyle\frac{d}{dt}\vec{L}=\vec{r}_{a}\times\vec{F}_{a}^{(e)}+\vec{r}_{b}\times\vec{F}_{b}^{(e)}=\vec{T}_{a}^{(e)}+\vec{T}_{b}^{(e)}=\vec{T}^{(e)}・・・(B)

【質量中心への角運動量の変換】

\vec{L}^{\prime}=\vec{L}-M\vec{r}\times\vec{v}・・・(C)

 

式(A),(B)を解いて、棒の並進運動と回転運動がわかります。

そして、棒が回転しているかどうか知りたければ式(C)で変換してやればいいのです。

著者:安井 真人(やすい まさと)