速度

速度

 前回までの内容で、質点の位置はベクトルで記述できることがわかりました。ここでは、この位置ベクトルから移動の度合いを示す速度という考え方を紹介します。そして、位置ベクトルの時間変化から速度を導出する方法を解説します。

 速度

 いま、質点が時刻tに位置(x(t),y(t),z(t))にいたとします。この際の位置ベクトルは

 \displaystyle\vec{r}(t)=\left(\begin{array}{c}x(t)\\y(t)\\z(t)\end{array}\right)

とかくことができます。

速度

この質点が少し時間がたった時刻t+\Delta tでは

 \displaystyle \vec{r}(t+\Delta t)=\left(\begin{array}{c}x(t+\Delta t)\\y(t+\Delta t)\\z(t+\Delta t)\end{array}\right)

へ移動します。ここでテイラー展開すると

 \displaystyle \vec{r}(t+\Delta t)=\left(\begin{array}{c}x(t)+\displaystyle\frac{dx}{dt}\Delta t+O_{x}((\Delta t)^{2})\\y(t)+\displaystyle\frac{dy}{dt}\Delta t+O_{y}((\Delta t)^{2})\\z(t)+\displaystyle\frac{dz}{dt}\Delta t+O_{z}((\Delta t)^{2})\end{array}\right)

となります。ここで、\displaystyle O_{x}((\Delta t)^{2}),O_{y}((\Delta t)^{2}),O_{z}((\Delta t)^{2})\Delta tの二乗以上の項をまとめたものです。

 テイラー展開について軽く補足しておきます。テイラー展開とは、ある微小範囲で関数をn次関数で近似したものです。例えば関数x(t)を考えます。この関数x(t)t付近を拡大していくと、直線(1次関数)に見えてきます。

テイラー展開

この直線は接線であり

 \displaystyle x(t+\Delta t)=x(t)+\displaystyle\frac{dx}{dt}\Delta t

と記述できます。以上のような手順で、2次関数、3次関数、…と近似していったのがテイラー展開です。

 \displaystyle x(t+\Delta t)=x(t)+\displaystyle\frac{dx}{dt}\Delta t+\frac{1}{2!}\frac{d^{2}x}{dt^{2}}(\Delta t)^{2}

この場合、t付近で関数を2次関数で近似しています。\Delta tが小さい時に近似の精度がよくなります。

 速度

さて、ここで\Delta tの間に変位したベクトル\Delta \vec{r}を求めると

 \displaystyle\Delta \vec{r}(t)=\vec{r}(t+\Delta t)-\vec{r}(t)=\left( \begin{array}{c}\displaystyle\frac{dx}{dt}\Delta t +O_{x}((\Delta t)^{2})\\\displaystyle\frac{dx}{dt}\Delta t +O_{x}((\Delta t)^{2})\\\displaystyle\frac{dx}{dt}\Delta t +O_{x}((\Delta t)^{2})\end{array}\right)

となります。ここで速度は変位ベクトル\Delta \vec{r}\Delta tで割って、\Delta t\to 0としたものとすると

 \displaystyle\vec{v}(t)=\lim_{\Delta t\to 0}\frac{\Delta \vec{r}(t)}{\Delta t}=\lim_{\Delta t\to 0}\left( \begin{array}{c}\displaystyle\frac{dx}{dt} +\frac{O_{x}((\Delta t)^{2})}{\Delta t}\\ \displaystyle\frac{dx}{dt} +\frac{O_{x}((\Delta t)^{2})}{\Delta t}\\\displaystyle\frac{dx}{dt} +\frac{O_{x}((\Delta t)^{2})}{\Delta t}\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c}\displaystyle\frac{dx}{dt}\\\displaystyle\frac{dy}{dt}\\\displaystyle\frac{dz}{dt}\end{array}\right)

となります。\displaystyle\frac{O_{x}((\Delta t)^{2})}{\Delta t},\frac{O_{y}((\Delta t)^{2})}{\Delta t},\frac{O_{z}((\Delta t)^{2})}{\Delta t}\Delta tに対して分子が二次以上で、分母が一次です。よって、最終的に\Delta tに対して一次以上となり、\Delta t\to 0なら0となります。以上のことから、速度の定義は以下のようになります。

速度

位置ベクトル\vec{r}(t)の速度\vec{v}(t)は各成分を時間で微分したもので以下のようになる。

 \displaystyle\vec{v}(t)=\left(\begin{array}{c}\displaystyle\frac{dx}{dt}\\\displaystyle\frac{dy}{dt}\\\displaystyle\frac{dz}{dt}\end{array}\right)

 では問題を解いていき、速度を位置ベクトルから計算できるようになりましょう。

次のような位置ベクトル

 \displaystyle\vec{r}(t)=\left(\begin{array}{c}t\\t^{2}-t+1\\2\end{array}\right)

の速度をもとめよ。

ただ、成分ごとに時間で微分すればいいので

 \displaystyle\vec{v}(t)=\frac{d\vec{r}}{dt}=\left(\begin{array}{c}1\\2t-1\\0\end{array}\right)

となります。

 力学では微積分をよく使うのでしっかり復習することをおすすめします。

著者:安井 真人(やすい まさと)