波動方程式の解の性質

悩む男

前回、弦の波動方程式

 \displaystyle\frac{\partial^{2}y}{\partial t^{2}}=\frac{T}{\rho}\frac{\partial^{2}y}{\partial x^{2}}

を導きました。今回は波動方程式の解について考えていきます。

弦の運動方程式

解の模索

 まず、いろいろと解を模索するため、

 \displaystyle y(x,t)=A\sin \left( x-ct\right)

を試しに式に代入してみましょう。この関数は

 \displaystyle\frac{\partial^{2} y}{\partial t^{2}}=-c^{2}A\sin\left( x-ct\right)=-c^{2}y(x,t),

 \displaystyle\frac{\partial^{2} y}{\partial x^{2}}=-A\sin\left( x-ct\right)=-y(x,t)

なので

 \displaystyle\frac{\partial^{2} y}{\partial t^{2}}=c^{2}\frac{\partial^{2} y}{\partial x^{2}}

となることがわかります。これと波動方程式を比べると

 \displaystyle c=\pm\sqrt{\frac{T}{\rho}}

とすれば一致します。ですから

 \displaystyle y_{+}(x,t)=A\sin \left( x-\sqrt{\frac{T}{\rho}}t\right),

 \displaystyle y_{-}(x,t)=A\sin \left( x+\sqrt{\frac{T}{\rho}}t\right)

は波動方程式の解の一つであることがわかります。

解の一般化

 上記のことを一般化すると

 \displaystyle f(x,t)=f(x-ct),\\g(x,t)=g(x+ct),\\c=\sqrt{\frac{T}{\rho}}

が波動方程式の解となることがわかります。ここで関数f,gは好きなものを選んでください。ただし、弦の両端は固定してあるので、両端でゼロとなる関数です。実際に、関数fを偏微分(2つある変数のうち片側が一定とみなし微分)すると

 \displaystyle\frac{\partial^{2}f}{\partial t^{2}}=c^{2}f(x-ct)

 \displaystyle\frac{\partial^{2}f}{\partial x^{2}}=f(x-ct)

となり

 \displaystyle\frac{\partial^{2}f}{\partial t^{2}}=c^{2}\frac{\partial^{2}f}{\partial x^{2}}

が得られます。g(x,t)も同様です。

進行波と後退波

 f(x-ct)t=0で原点x=0にある値f(0)が、t=t_{0}では

 f(0)=f(x_{0}-ct_{0})\Leftrightarrow x_{0}=ct_{0}

となるので、速度cでx軸正の方向へ進んでいることがわかります。そのためf(x-ct)進行波と呼びます。

 一方g(x+ct)は同様の考え方をすると、速度cでx軸負の方向へ進んでいます。そのためg(x+ct)後退波と呼びます。

 以上のことから、弦での波の伝わる速さは

 \displaystyle c=\sqrt{\frac{T}{\rho}}

となります。つまり、弦を強く引けば引くほど、軽い素材ほど波はすばやく伝わります。糸電話で素早く通信したい場合は、強く糸を引きましょう(ただし、壊れない程度に)。

重ね合わせの原理

 さらに波動方程式について調べると解が

 f_{1}(x,t),f_{2}(x,t)

と二つある場合、これらの組み合わせ

 f(x,t)=c_{1}f_{1}(x,t)+c_{2}f_{2}(x,t)

も解であることがわかります。実際に

 \displaystyle \frac{\partial^{2}f_{1}}{\partial t^{2}}=c^{2}\frac{\partial^{2}f_{1}}{\partial x^{2}},

 \displaystyle \frac{\partial^{2}f_{2}}{\partial t^{2}}=c^{2}\frac{\partial^{2}f_{2}}{\partial x^{2}}

にそれぞれc_{1},c_{2}をかけて足すと

 \displaystyle c_{1}\frac{\partial^{2}f_{1}}{\partial t^{2}}+c_{2}\frac{\partial^{2}f_{2}}{\partial t^{2}}=c_{1}c^{2}\frac{\partial^{2}f_{1}}{\partial x^{2}}+c_{2}c^{2}\frac{\partial^{2}f_{2}}{\partial x^{2}},

 \displaystyle\Leftrightarrow \frac{\partial^{2}}{\partial t^{2}}(c_{1}f_{1}+c_{2}f_{2})=c^{2}\frac{\partial^{2}}{\partial x^{2}}(c_{1}f_{1}+c_{2}f_{2}),

 \displaystyle\Leftrightarrow \frac{\partial^{2}f}{\partial t^{2}}=c^{2}\frac{\partial^{2}f}{\partial x^{2}}

となることからわかります。これを重ね合わせの原理といいます。

波動方程式の解の性質のまとめ

 波動方程式

 \displaystyle\frac{\partial^{2}y}{\partial t^{2}}=c^{2}\frac{\partial^{2}y}{\partial x^{2}}

の解は進行波と後退波

 f(x-ct),g(x+ct)

の重ね合わせ

 y(x,t)=c_{1}f(x-ct)+c_{2}g(x+ct)

で表すことができます。

著者:安井 真人(やすい まさと)