テイラー展開

振り子時計

 微分を物理などで応用する際、よく値の変化が少ない量を取り扱うことがあります。例えば、天井につり下げた重りを少しの揺らした際の角度がそれにあたります。ここでは、関数をn次関数で近似する方法であるテイラー展開について解説します。

振り子の運動

 天井に吊り下げられたおもりの運動について考えます。このとき、重りと壁の距離は糸の長さを1とすると

 1\times\cos \theta=\cos\theta

となります。このまま\cos\thetaで扱ってもいいのですが、扱いが面倒です。そこで、\cos\thetaを簡単な関数で近似することを考えます。ここでは、\thetaがとても小さい場合を考えます。\thetaが小さいと、\cos\thetaを簡単な関数で近似できるようになります。

 振り子

0次で近似する

 まずはもっとも簡単な関数である0次関数(定関数)で近似してみます。近似方法は簡単です。\thetaがとても小さい場合を考えているので

 \cos \theta \approx \cos 0=1

と近似できます。これなら関数の扱いがかなり簡単でいいですね。

1次で近似する

 0次関数でもいいのですが、0次の場合はおもりの位置が常に一定になります。そのため、おもりの運動を解析できません。そこで、定数で近似するのではなくて、さらに一次関数で近似します。1次関数で近似するには

 \cos \theta \approx 1+a\theta

として、両辺を微分します。すると

 -\sin\theta\approx a

となり、\theta\to 0とすれば

 a\approx 0

となります。よって、

 \displaystyle\cos \theta \approx 1+\left(\frac{d}{d\theta}\cos \theta\right)_{\theta=0}=1+\left( -\sin \theta\right)_{\theta=0}=1

と1次関数で近似できます。

2次で近似する

 一次関数で近似しましたが、まだ定関数のままで運動を扱うのは難しそうです。そこで、さらに二次関数で近似します。すると

  \cos \theta\approx 1+a\theta^{2}

 \Rightarrow -\sin\theta\approx 2a\theta ← \thetaで微分

 \Rightarrow -\cos\theta\approx 2a ← \thetaで微分

よって、\theta\to 0とすれば

 \displaystyle a\approx \frac{1}{2}(-\cos\theta)_{\theta=0}=-\frac{1}{2}

となり

 \displaystyle\cos \theta\approx 1-\frac{\theta^{2}}{2}

が得られます。これで、\thetaによっておもりの位置が変わるので、運動も扱えそうです。2次関数なので解析も簡単でいいですね。

テイラー展開

 上記のように関数をn次関数で近似していく方法をテイラー展開といいます。

テイラー展開

関数f(x)のテイラー展開は一般に

 \displaystyle f(x)=f(a)+\frac{df}{dx}(a) (x-a)+\frac{1}{2!}\frac{d^{2}f}{dx^{2}}(a)(x-a)^{2}+\ldots +\frac{1}{n!}\frac{d^{n}f}{dx^{n}}(a)(x-a)^{n}+\ldots\\=\sum_{i=0}^{\infty}\frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^{n}

とかくことができる。ここで、

 n!=n\times (n-1)\times \cdots 2\times 1

を意味する。

nを増やしていくと近似の精度が上がっていきます。しかし、一方で関数が複雑になるというデメリットもあります。そのため、たいてい、1次関数か2次関数での近似をよく使用します。

マクローリン展開

 テイラー展開のうちa=0の場合をマクローリン展開といいます。

マクローリン展開

テイラー展開のうちa=0の場合をマクローリン展開といい、以下のようになる。

 \displaystyle f(x)=\sum_{i=0}^{\infty}\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^{n}

 ではさきほど\cos xのマクローリン展開をやってみましょう。まず、

 \displaystyle f^{(0)}(0)=1,\\f^{(1)}(0)=0,\\f^{(2)}(0)=-1,\\f^{(3)}(0)=0,\\\cdots

となり、1,0,-1,0,1,0,-1,…となることがわかります。つまり、f^{(n)}(0)

  1. nが奇数なら0
  2. nが偶数なら(-1)^{n/2}

となります。よって、\cos xのマクローリン展開は

 \displaystyle \cos x=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^{n}}{(2n)!}x^{2n}

となります。これが\cos xのマクローリン展開です。

主要関数のマクローリン展開

 では主要関数のマクローリン展開を以下に羅列します。暇な時に自分で導いてみてください。

  1. \displaystyle\sin x=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^{n}}{(2n+1)!}x^{2n+1}
  2. \displaystyle \cos x=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^{n}}{(2n)!}x^{2n}
  3. \displaystyle e^{ix}=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{x^{n}}{n!}

補足ですが、これらのマクローリン展開から、オイラーの公式

 e^{x}=\cos x+i\sin x

が導けるので試してみてください。では、他の関数を紹介します。

  1. \displaystyle\log(1+x)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{(-1)^{n+1}}{n}x^{n},(|x|<1)
  2. \displaystyle\frac{1}{1-x}=\sum_{n=0}^{\infty}x^{n},(|x|<1)

著者:安井 真人(やすい まさと)