実数の定義その1

実数の定義その1

 微積分の基本となる実数の定義から始めます。なぜ実数の定義から始めるかというと、実数の連続性が微分において重要な役割を担うからです。また、注意ですが、高校までの内容と大学の内容では大きく異なります。高校では問題を解ければ問題ありませんでした。しかし、大学の数学では数学の体系を論理立てて構成することに重きをおきます。とても抽象的なので定義をしっかり理解し、定理を証明していくことが大事になります。はじめは慣れないかと思いますが、ある程度慣れていけば論理が自然に身につきます。ここで身についた論理は研究や開発で役立つ武器となるでしょう。

実数の定義1

 ではさっそく実数の定義の一部を紹介します。定義を読み流すのではなく、一つ一つ定義を丁寧に理解してください。これ以降、実数の集合を\mathbb{R}で表します。実数\mathbb{R}には以下の性質があります。

実数の性質1

\mathbb{R}の任意の二つの要素a,bに対して、

和:a+b

積:ab

となる\mathbb{R}の要素が定義されて、以下の1から10までの項目を満たす。

  1. 和の交換法則:a+b=b+a
  2. 積の交換法則:ab=ba
  3. 和の結合法則:(a+b)+c=a+(b+c)
  4. 積の結合法則:(ab)c=a(bc)
  5. すべての実数aに対して、a+0=aが成り立つ数0が存在し、和の単位元と呼ぶ
  6. すべての実数aに対して、a1=aが成り立つ数1が存在し、積の単位元と呼ぶ
  7. 任意の実数aに対して、a+(-a)=0となる-aが存在し、和の逆元と呼ぶ
  8. 0を除く任意の実数aに対して、aa^{-1}=1となるa^{-1}が存在し、積の逆元と呼ぶ
  9. 分配法則:a(b+c)=ab+ac
  10. 0\neq 1

以上に述べた性質を満たす集合\mathbb{R}を「体(たい)」といいます。よって、定義1は「実数は体である」と要約できます。

体の性質

いくらか体に関する性質を証明してみます。

0はただひとつ

0はただ一つである。

背理法で証明します。もし異なる値の0,0^{\prime}があったとします。すると0の性質と和の交換法則より

 0\\=0+0^{\prime}\\=0^{\prime}+0\\=0^{\prime}

となります。これは0\neq 0^{\prime}に反します。同様に1はただ一つであることも証明できます。

体の性質

 -(-a)=a

これは-aの逆元はaであることをいっています。ですから

 (-a)+a=0

を証明すればいいことになります。これは交換法則と逆元の性質を使えば

 (-a)+a=a+(-a)=0

となるので簡単に証明されます。

 (a^{-1})^{-1}=a

も同様に証明できるのでやってみてください。

体の性質

 0a=0

これは

 0=0a+(-(0a))←0の性質

 =(0+0)a+(-(0a))←0の性質

 =(0a+0a)+(-0a)←分配法則

 =0a+(0a+(-0a))←和の結合法則

 =0a+0←逆元の性質

 =0a←0元の性質

により証明できます。

 他にも多くのことが証明できます。教科書にのっていると思うので、証明してみてください。定義のどの部分を使用しているかを意識して証明するのがポイントです。

実数は体である。

著者:安井 真人(やすい まさと)