絶対値

ふくろう

 ここまでの講義で実数の性質である体や大小について解説しました。以上2つの定義により、実数の演算についてほとんどカバーできています。今回は実数の定義から離れ別の演算である「絶対値」についての定義を解説します。

定義.最大元と最小元

いきなり絶対値を解説したいのですが、はじめに準備のため最大元と最小元について説明します。

最大元・最小元

実数\mathbb{R}の部分集合Aに対して

  1. m\in A
  2. 任意のa\in Aに対してa\leqq m

が成り立つとき、mAの最大元といいMaxAとかく。最小元は

  1. m\in A
  2. 任意のa\in Aに対してa\geqq m

となり、MinAとかく。

定義の解説のため、以下にいくつか例をあげます。

 A=\{x|0<x\leqq 1 \}

という集合を考えます。この集合の最大元は

 1

となります。一方、最小元は存在しません。というのも、いくら0に近い数0.0001を取っても

 0.00001<0.0001

というAの元が存在するからです。

上記のように「a<bの間に実数が存在する」ことは以下の命題から理解できます。

間に実数が存在する

任意の実数a,b(a<b)に対して,a<c<bとなるcが存在します。

証明は簡単で

 \displaystyle c=\frac{a+b}{2}

と置けばいいです。実際に

\displaystyle b-c=b-\frac{a+b}{2}=\frac{b-a}{2}>0,

\displaystyle c-a=\frac{a+b}{2}-a=\frac{b-a}{2}>0

となります。

絶対値

ではいよいよ絶対値の定義に移ります。

絶対値

任意のa\in \mathbb{R}に対して

 |a|=Max(a,-a)

を実数a絶対値と呼ぶ。

 |1|=Max(1,-1)=1,

 |-2|=Max(-2,-(-2))=Max(-2,2)=2

 では、絶対値の基本公式について定義を用いて証明していきます。

絶対値の公式1

 \displaystyle |a|=\left\{\begin{array}{ll}a&,a\geq 0\\ -a&,a\leq 0\end{array}\right.

a\leq0のとき、

 a-(-a)=2a\leq0\Leftrightarrow a\leq -a

なので

 |a|=Max(a,-a)=-a

となります。同様にa\geq 0のときは

 |a|=Max(a,-a)=a

となります。

絶対値の公式2

 |-a|=|a|

 |-a|=Max(-a,-(-a))=Max(-a,a)=|a|

絶対値の公式3

 -|a|\leq a\leq |a|

a\geq 0のときは命題1より、|a|=aなので、

 |a|-a=a-a=0\geq0\\a-(-|a|)=a-(-a)=2a\geq0

となります。よって

 -|a|\leq a\leq |a|

が成り立ちます。

同様にしてa<0のときも成り立ちます。

絶対値の公式4

 |a|-|b|\leq |a+b|\leq |a|+|b|

4つに場合分けして証明します。

a\geq 0,b\geq0のとき

 |a|=a,\\|b|=b\\|a+b|=a+b

なので

 |a|+|b|-|a+b|=a+b-a-b=0\geq0\Leftrightarrow |a+b|\leq |a|+|b|

 |a+b|-(|a|-|b|)=a+b-(a-b)=2b\geq 0\Leftrightarrow |a|-|b|\leq |a+b|

が成り立ちます。

a<0,b\geq0のとき

 |a|=-a,\\|b|=b

となります。さらに-a\geq bのときは

 |a+b|=Max(a+b,-a-b)=-a-b

なので

 |a|+|b|-|a+b|=-a+b-(-a-b)=2b\geq0,\\|a+b|-(|a|-|b|)=-a-b-(-a-b)=2b\geq0

が成り立ちます。一方、-a<bのときは

 |a+b|=Max(a+b,-a-b)=a+b

なので

 |a|+|b|-|a+b|=-a+b-a-b=-2a\geq0,\\ |a+b|-(|a|-|b|)=a+b-(-a+b)=2a\geq 0

となります。

a\geq0,b<0のとき

これは②と同様に証明できます。

a<0,b<0のとき

これも①と同様に証明できます。

 実数aの絶対値はMax(a,-a)である。

著者:安井 真人(やすい まさと)