テイラー展開でおさえておきたいこと

私たちの日常には、少ししか変化しない量というものがあります。

たとえば、100円玉を考えてみてください。

100円玉に力を加えて圧縮することを考えます(こんな人はいないと思いますが…)

当然ですが、私たちの握力では押しても100円玉の厚さはほとんど変化しません。

100円玉の厚さは1.8mmだそうですが(ウィキペディア参照)、100円玉を圧縮してもせいぜい1.8mmが1.79mmになるといったレベルでしょう。(ためしたことはありません。材料力学を使えばある程度の推測はできるでしょう)

このことをもう少し数式化してみましょう。

百円玉を押すということの定式化

いま、百円玉の厚さをhとおきます。

このhは百円玉を押す力Fに依存するので

h=f(F)

というよくわからない関数fでかけるでしょう(この関数を知ろうと思ったら実際に実験でしてみればいい。ちなみに材料力学的に考えるとhFに比例します。)

この関数fが簡単な関数ならいいのですが、\sinのような難しい関数だと計算が面倒です。

そこで、もうすこし楽をする方法はないかと考えるわけです。

楽をして計算する方法

どうするかというと

「想定している力Fに対して厚さhはほとんど変化しない」

ということを使います。

つまり、

h=h_{0}(一定)

でいいじゃないかと考えるわけです。

私たちの力で押してもほとんど百円玉の厚さは変わらないのだから、一定でいいじゃないか、という考え方です。

18mmも17.9mmもほとんど同じとするのですね。

実際に、

\frac{0.1}{18}=0.00555

なので誤差は悪くても0.5%でとてもいい近似だということができます。

このことを「関数f(F)h_{0}におけるゼロ次のテイラー展開」いいます。

もちろんこの近似は力Fに対して厚さhがほとんど変化しないときにしか実用性がありません。

力に対して厚さが大きく変化する場合は誤差が大きくなります。

想定する変数の変化に対して、関数値があまり変化しない場合にテイラー展開は威力を発揮するわけです。

練習問題

では、ゼロ次のテイラー展開をしていきましょう。

f(x)=x^{2}-2x+1

x=1でゼロ次テイラー展開します。

f(1)=1^{2}-2+1=0

ですから、

f(x)=0

と近似できます。この近似はx=1付近にのみ有効です。

たとえば、x=1.0001の実際の関数値は

f(1.0001)=1.0001^{2}-2\times 1.0001+1=1.00020001-2.0002+1=0.00000001

となり、ゼロ次テイラー展開の値とほとんど同じ値となります。つまり、良い近似というわけです。

では、x=1から離れた値であるx=0ではどうでしょうか。

これも計算すると

f(0)=0^{2}-2\times 0+1=1

となり、ゼロ次テイラー展開のx=0と大きく異なります。

テイラー展開は、関数値がほとんど変化しない領域でしか効果を発揮しないというわけがよくわかると思います。

一次のテイラー展開

定数での近似は計算が簡単になっていいのですが、あまりにいい加減すぎるのでは、とおもわれる方も多いでしょう。

そこで、計算は少し面倒でもいいから、近似精度をあげようと考えたのが「一次のテイラー展開」です。つまり

f(x)=x^{2}-2x+1

といった関数を直線で近似しましょうということです。先程は、x=1付近で

f(x)=0

と近似しましたがこれを

f(x)=0+ax

で近似しようとすることです。ここで、ax=1での傾きなので微分法を使ってすぐに計算でき、

a=\frac{df}{dx}(1)=2-2=0

となります。よって、一次のテイラー展開は

f(x)=0

となります。ちょっと例が悪くて、ゼロ次も一次も同じ関数になってしまいました。ですから、x=0で一次のテイラー展開をしてみます。まず、

f(0)=1,

\frac{df}{dx}(0)=-2

と計算できるので

f(x)=1-2x

x=0での一次のテイラー展開となります。ちなみにゼロ次のテイラー展開は

f(x)=1

となります。関数が一次関数になったので、計算が面倒ですが、精度が少し上がります。

もちろんこれを拡張して、二次、三次と拡張することができます。

拡張すればするほど精度は上がりますが、計算が面倒になります。

精度と計算を考えて、適切なところでテイラー展開をうちきりましょう。

まとめ

  1. テイラー展開は想定する従属変数の変化に対して、関数値がほとんど変化しないときに威力を発揮します。
  2. テイラー展開はゼロ次、一次、二次と拡張するに従い近似精度は上がりますが、計算が面倒になります。

物理とかでテイラー展開が出てきたら、変数が変化しても関数値がほとんど変化しないという意識を持つことが大切です。

とにかくよく使うので、最低でも一次関数で近似できるようにしておきましょう。

著者:安井 真人(やすい まさと)