位置ベクトル

位置ベクトル

前回、幾何ベクトルを学びました。ここでは座標軸を導入することで、ベクトルを数字で表現する方法「数ベクトル」を学びます。<また、線形従属と独立の考え方を導入し座標について考えていきます。

位置ベクトル

早速ですが、位置ベクトルについての定義を解説します。定義は以下のようになります。

位置ベクトル

原点を始点とするベクトルを位置ベクトルといい、すべての位置ベクトルは

 \overrightarrow{OP}=\left(\begin{array}{c}x\\ y\\ z\end{array}\right)

で表すことができる。ここで、x,y,z\in\mathbb{R}である。

ただ、原点から座標(x,y,z)への幾何ベクトルを位置ベクトルと呼ぶことができます。また、位置ベクトルならただ3つの実数の組に過ぎません。ですから、位置ベクトルを数ベクトルと呼ぶこともできます。また、次元を4,5,6,…と拡大することも容易なのが特徴です。

位置ベクトルにおける和とスカラー倍

幾何ベクトルと同様に位置ベクトルの和とスカラー倍を以下のように定義します。

位置ベクトルの和とスカラー倍

位置ベクトルを使うと和とスカラー倍を

  • 和:\left(\begin{array}{c}x_{A}\\y_{A}\\z_{A}\end{array}\right)+\left(\begin{array}{c}x_{B}\\y_{B}\\z_{B}\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c}x_{A}+x_{B}\\y_{A}+y_{B}\\z_{A}+z_{B}\end{array}\right)
  • スカラー倍:c\left(\begin{array}{c}x_{A}\\y_{A}\\z_{A}\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c}cx_{A}\\cy_{A}\\cz_{A}\end{array}\right)

とする。

この定義には幾何学が入っていないので、計算するのが簡単です。これが位置ベクトル(数ベクトル)の良さになります。

任意のベクトルを表せる

この位置ベクトルを使えば、

始点を位置A(x_{A},y_{A},z_{A})、終点を位置B(x_{B},y_{B},z_{B})としたベクトル\overrightarrow{AB}

 \overrightarrow{AB}=\overrightarrow{AO}+\overrightarrow{OB}\\=-\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{OB}\\=\left(\begin{array}{c}-x_{A}\\-y_{A}\\-z_{A}\end{array}\right)+\left( \begin{array}{c}x_{B}\\y_{B}\\z_{B}\end{array}\right)\\=\left(\begin{array}{c}x_{B}-x_{A}\\y_{B}-y_{A}\\z_{B}-z_{A}\end{array}\right)

となります。ですから、すべての幾何ベクトルは位置ベクトルの和やスカラー倍ですべて表記することができます。

単位ベクトル

3つのベクトルの和やスカラー倍ですべてのベクトルを表記できることがわかったかと思います。では、3つのベクトルをどのように選ぶのがいいかという疑問が生じます。基本的に平行でない組み合わせならいいのですが、垂直で長さが1のベクトルである単位ベクトルがよく用いられます。以下に単位ベクトルの定義を述べます。

単位ベクトル

 \textbf{\emph{e}}_{1}=\left(\begin{array}{c}1\\0\\0\end{array}\right),\textbf{\emph{e}}_{2}=\left(\begin{array}{c}0\\1\\0\end{array}\right),\textbf{\emph{e}}_{3}=\left(\begin{array}{c}0\\0\\1\end{array}\right)

単位ベクトルという。

単位ベクトルを使えば

 \left(\begin{array}{c}x\\y\\z\end{array}\right)

 \left(\begin{array}{c}x\\y\\z\end{array}\right)=x\textbf{\emph{e}}_{1}+y\textbf{\emph{e}}_{2}+z\textbf{\emph{e}}_{3}

と表すことができます。つまりベクトルは

 \left(\begin{array}{c}x\\y\\z\end{array}\right)

という表記法と単位ベクトルの和による表記法が可能になるのです。

線形独立と線形結合

続いて線形独立と線形結合について解説します。

線形独立と従属

平行でない二つのベクトルを線形独立といい、線形独立でないベクトルは線形従属という。

要するに平行なら従属、そうでないなら独立ということです。単位ベクトル\textbf{\emph{e}}_{1},\textbf{\emph{e}}_{2},\textbf{\emph{e}}_{3}はそれぞれ平行でないので線形独立となります。

また、証明はしませんが以下の定理が成り立ちます。

線形独立と従属

\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}},\textbf{\emph{c}}が線形独立ならば、空間上の任意のベクトル\textbf{\emph{X}}

 \textbf{\emph{X}}=x\textbf{\emph{a}}+y\textbf{\emph{b}}+z\textbf{\emph{c}}

により表記できる。ここでx,y,z\in\mathbb{R}である。

平行でない3つの方向へ進むことができれば、好きな場所にいけるよねっという定理です。

あと、補足ですが

 \textbf{\emph{X}}=x\textbf{\emph{a}}+y\textbf{\emph{b}}+z\textbf{\emph{c}}

\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}},\textbf{\emph{c}}線形結合といいます。

 

いくつか問題を解いてみましょう。

次の計算をせよ。

 2\left(\begin{array}{c}2\\-1\\3\end{array}\right)-3\left(\begin{array}{c}0\\1\\-1\end{array}\right)

 2\left(\begin{array}{c}2\\-1\\3\end{array}\right)-3\left(\begin{array}{c}0\\1\\-1\end{array}\right)\\=\left(\begin{array}{c}4\\-2\\6\end{array}\right)-\left(\begin{array}{c}0\\3\\-3\end{array}\right)\\=\left(\begin{array}{c}4-0\\-2-3\\6+3\end{array}\right)\\=\left(\begin{array}{c}4\\-5\\9\end{array}\right)

次のベクトル\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}}は線形独立か線形従属か?

 \textbf{\emph{a}}=\left(\begin{array}{c}2\\1\\-1\end{array}\right),\\ \textbf{\emph{b}}=\left(\begin{array}{c}4\\2\\-2\end{array}\right)

 2\textbf{\emph{a}}=\textbf{\emph{b}}

となるので、\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}}は平行です。

よって、線形従属となります。

著者:安井 真人(やすい まさと)