ベクトルの長さと内積

ベクトルの長さと内積

ここでは、ベクトルの長さと内積について学びます。ベクトルの長さと内積の定義やこれらに関する定理について紹介します。

ベクトルの長さ

ではまずベクトルの長さに関する定義です。

ベクトルの長さ

ベクトル

 \textbf{\emph{a}}=\left(\begin{array}{c}x\\y\\z\end{array}\right)

の長さを\| \textbf{\emph{a}}\|と表す。

ここでは二重線で囲んでいますが、一重線で囲む場合もあります。好きなほうを使いましょう。あと、三平方の定理から以下の定理を導くことができます。

ベクトルの長さ

 \| \textbf{\emph{a}}\|=\sqrt{x^{2}+y^{2}+z^{2}}

以上でベクトルの長さの定義の解説は終わりです。

ベクトルの内積

ベクトルには内積という演算法があります。内積を導入することで、計算などに何かと便利なのでここで紹介します。さっそくですが、内積を以下のように定義します。

内積

 (\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})=\|\textbf{\emph{a}}\|\cdot\|\textbf{\emph{b}}\|\cos\theta

よく\textbf{\emph{a}}\cdot\textbf{\emph{b}}のようにドットを使って内積を記述することがあります。これに関しては好きな記述法を使ってください。

ベクトル\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}}が直交するとき\cos\theta=0なので

 (\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})=0

がなりたちます。また、幾何ベクトルと位置ベクトルの関係から以下の定理が成り立ちます。

内積

ベクトル\textbf{\emph{a}}=(x_{1},y_{1},z_{1}),\textbf{\emph{b}}=(x_{2},y_{2},z_{2})としたとき、

 \left(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}}\right)=x_{1}x_{2}+y_{1}y_{2}+z_{1}z_{2}

が成り立つ。

余弦定理より

 \displaystyle\left(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}}\right)=\|\textbf{\emph{a}}\|\cdot\|\textbf{\emph{b}}\|\cos\theta\\=\frac{1}{2}(\|\textbf{\emph{a}}\|^{2}+\|\textbf{\emph{b}}\|^{2}-\|\textbf{\emph{b}}-\textbf{\emph{a}}\|^{2})\\=\frac{1}{2}(x_{1}^{2}+y_{1}^{2}+z_{1}^{2}+x_{2}^{2}+y_{2}^{2}+z_{2}^{2}-(x_{1}-x_{2})^{2}-(y_{1}-y_{2})^{2}-(z_{1}-z_{2})^{2})\\=x_{1}x_{2}+y_{1}y_{2}+z_{1}z_{2}

が成り立ちます。

この定理を使うと、数ベクトルを通して簡単に内積を計算できて便利です。

内積に関わる定理

内積には以下の様な性質があります。

内積

  1. シュヴァルツの不等式:|(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})|\leq \|\textbf{\emph{a}}\|\cdot\|\textbf{\emph{b}}\|
  2. 三角不等式:\|\textbf{\emph{a}}+\textbf{\emph{b}}\|\leq \|\textbf{\emph{a}}\|+\|\textbf{\emph{b}}\|
  3. c(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})=(c\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})=(\textbf{\emph{a}},c\textbf{\emph{b}}),
  4. (\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}}_{1}+\textbf{\emph{b}}_{2})=(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}}_{1})+(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}}_{2})\\ (\textbf{\emph{a}}_{1}+\textbf{\emph{a}}_{2},\textbf{\emph{b}})=(\textbf{\emph{a}}_{1},\textbf{\emph{b}})+(\textbf{\emph{a}}_{2},\textbf{\emph{b}})
  5. (\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})=(\textbf{\emph{b}},\textbf{\emph{a}})

(1)

シュヴァルツの不等式は

 |\cos\theta|\leq 1

なので

 |\|\textbf{\emph{a}}\|\cdot\|\textbf{\emph{b}}\|\cos\theta|\leq \|\textbf{\emph{a}}\|\cdot\|\textbf{\emph{b}}\|\\\Leftrightarrow |(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})|\leq \|\textbf{\emph{a}}\|\cdot\|\textbf{\emph{b}}\|

が成り立ちます。

 (2)

三角不等式は三角形の3辺の関係から

 \|\textbf{\emph{a}}+\textbf{\emph{b}}\|\leq \|\textbf{\emph{a}}\|+\|\textbf{\emph{b}}\|

となります。

 (3)

 c(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})=(c\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})

c\geq 0より

 (c\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})=\|c\textbf{\emph{a}}\|\cdot\|\textbf{\emph{b}}\|\cos\angle AOB\\ =c\|\textbf{\emph{a}}\|\cdot\|\textbf{\emph{b}}\|\cos\angle AOB\\=c(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})

となります。c<0のときは、A^{\prime}を原点においてAと対称な点とすれば

 (c\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})=\|c\textbf{\emph{a}}\|\cdot\|\textbf{\emph{b}}\|\cos\angle A^{\prime}OB\\ =-c\|\textbf{\emph{a}}\|\cdot\|\textbf{\emph{b}}\|\cos\angle A^{\prime}OB\\=c\|\textbf{\emph{a}}\|\cdot\|\textbf{\emph{b}}\|\cos\angle AOB\\=c(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})

となります。c(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})=(\textbf{\emph{a}},c\textbf{\emph{b}})も同様に証明できます。

(4)

内積の定理

 \left(\textbf{\emph{a}}\cdot\textbf{\emph{b}}\right)=x_{1}x_{2}+y_{1}y_{2}+z_{1}z_{2}

を使えば

 (\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}}_{1}+\textbf{\emph{b}}_{2})\\=a_{x}(b_{1x}+b_{2x})+a_{y}(b_{1y}+b_{2y})+a_{z}(b_{1z}+b_{2z})\\=(a_{x}b_{1x}+a_{y}b_{1y}+a_{z}b_{1z})+(a_{x}b_{2x}+a_{y}b_{2y}+a_{z}b_{2z})\\=(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}}_{1})+(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}}_{2})

が得られます。もう一方も同様に証明できます。

 (5)

 (\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})=(\textbf{\emph{b}},\textbf{\emph{a}})

 (\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})=\|\textbf{\emph{a}}\|\cdot\|\textbf{\emph{b}}\|\cos\angle AOB\\=\|\textbf{\emph{b}}\|\cdot\|\textbf{\emph{a}}\|\cos\angle BOA\\=(\textbf{\emph{b}},\textbf{\emph{a}})

より証明できます。

平行四辺形の面積

ベクトル\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}}がつくる平行四辺形の面積S

 S=\|\textbf{\emph{a}}\|\cdot\|\textbf{\emph{b}}\|\sin\theta\\=\|\textbf{\emph{a}}\|\cdot\|\textbf{\emph{b}}\|\sqrt{1-\cos^{2}\theta}\\=\sqrt{\|\textbf{\emph{a}}\|^{2}\|\textbf{\emph{b}}\|^{2}-\|\textbf{\emph{a}}\|^{2}\|\textbf{\emph{b}}\|^{2}\cos^{2}\theta}\\=\sqrt{\|\textbf{\emph{a}}\|^{2}\|\textbf{\emph{b}}\|^{2}-(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})^{2}}

となります。平面のベクトル

 \textbf{\emph{a}}=\left(\begin{array}{c}a_{1}\\a_{2}\end{array}\right),\textbf{\emph{b}}=\left(\begin{array}{c}b_{1}\\b_{2}\end{array}\right)

の場合は

 \|\textbf{\emph{a}}\|=\sqrt{a_{1}^{2}+a_{2}^{2}},\\ \|\textbf{\emph{b}}\|=\sqrt{b_{1}^{2}+b_{2}^{2}},\\(\textbf{\emph{a}},\textbf{\emph{b}})=a_{1}b_{1}+a_{2}b_{2}

となるので

 S=\sqrt{(a_{1}^{2}+a_{2}^{2})(b_{1}^{2}+b_{2}^{2})-(a_{1}b_{1}+a_{2}b_{2})^{2}}\\= \sqrt{a_{1}^{2}b_{1}^{2}+a_{1}^{2}b_{2}^{2}+a_{2}^{2}b_{1}^{2}+a_{2}^{2}b_{2}^{2}-a_{1}^{2}b_{1}^{2}-2a_{1}a_{2}b_{1}b_{2}-a_{2}^{2}b_{2}^{2}}\\=\sqrt{a_{1}^{2}b_{2}^{2}+a_{2}^{2}b_{1}^{2}-2a_{1}a_{2}b_{1}b_{2}}\\=\sqrt{(a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1})^{2}}\\=|a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}|

となります。

著者:安井 真人(やすい まさと)