単位行列

単位行列

実数に1があるように、行列にも1があります。ここでは行列における1である単位行列について解説します。

単位行列

「1」という数は不思議な数で、実数aに対して

 a\times 1=a

が成り立ちます。つまり、1はいくらかけても値が変化しないのです。これと同じように

2☓2の行列Aに対して、掛け算しても変わらない行列Iはあるでしょうか?

では、ちょっと考えてみましょう。まず、

 A=\left[ \begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right],\\I=\left[ \begin{array}{cc}e&f\\g&h\end{array}\right]

という行列があったとします。両者をかけると

 AI=\left[ \begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right]\left[ \begin{array}{cc}e&f\\g&h\end{array}\right]=\left[\begin{array}{cc}ae+bg&af+bh\\ce+dg&cf+dh\end{array}\right]

となります。これが変わらずAにならないといけないので

 \left[ \begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right]=\left[\begin{array}{cc}ae+bg&af+bh\\ce+dg&cf+dh\end{array}\right]

となる必要があります。これが任意の実数a,b,c,dで成り立つ必要があるので

 I=\left[\begin{array}{cc}1&0\\0&1\end{array}\right]

が得られます。また、この行列の定義から

 AI=IA=A

が成り立つことがわかります。よって、実数における1は行列ではIとなり、これを単位行列と呼びます。ちなみに3次の単位行列は

 I=\left[\begin{array}{ccc}1&0&0\\0&1&0\\0&0&1\end{array}\right]

となります。4次以降の同様に右下に1が並びます。つまり

単位行列

n次元の単位行列Iとは

 I=\left[\begin{array}{ccccc}1&0&0&\cdots&0\\0&1&0&\cdots&0\\0&0&1&\cdots&0\\\vdots&\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\0&0&0&\cdots&1\end{array}\right]

である。

が単位行列の定義となります。

著者:安井 真人(やすい まさと)