転置行列

転置行列

行列の演算の一つに転置行列があります。転置行列の定義は簡単で「行列の列と行を入れ替えた行列」のことです。ここでは、この転置行列について学んでいきます。

転置行列とは

冒頭でも述べましたが、転置行列は簡単で「行と列を入れ替えた行列」のことです。ためしに、

 A=\left[\begin{array}{cc}1&2\\3&4\end{array}\right]

の転置行列を求めてみましょう。といっても、行と列を入れ替えればいいだけなので

 A^{T}=\left[\begin{array}{cc}1&3\\2&4\end{array}\right]

となります。転置行列の定義を以下に記載します。

転置行列

行と列をひっくり返した行列を転置行列といい、行列Aの転置行列を

 A^{T}

と表す。

行列を転置する場合、先の例のように行列の右上にTをつけます。「tenchi」ではなく「transpose」のTです。まあ、どちらでもいいですが。

転置の公式

転置に関するいくつかの公式についてみていきます。

その1

  (A+B)^{T}=A^{T}+B^{T}

試しに

 A=\left[\begin{array}{cc}1&2\\3&4\end{array}\right],B=\left[\begin{array}{cc}0&-1\\-2&1\end{array}\right]

で計算してみましょう。まず、A+Bを計算すると

 A+B=\left[\begin{array}{cc}1&1\\1&5\end{array}\right]

となるので、転置処理すれば

 (A+B)^{T}=\left[\begin{array}{cc}1&1\\1&5\end{array}\right]

が得られます。では、A^{T},B^{T}を計算すると

 A^{T}=\left[\begin{array}{cc}1&3\\2&4\end{array}\right],

 B^{T}=\left[\begin{array}{cc}0&-2\\-1&1\end{array}\right]

となるので、

 A^{T}+B^{T}=\left[\begin{array}{cc}1&1\\1&5\end{array}\right]

となります。確かに、

 (A+B)^{T}=A^{T}+B^{T}

が成り立っていますよね。

その2

 (\alpha A)^{T}=\alpha A^{T}、ここで\alphaは実数です。

これも

 A=\left[\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right]

で試してみましょう。

 \alpha A=\left[\begin{array}{cc}\alpha a&\alpha b\\ \alpha c&\alpha d\end{array}\right]

なので、

 (\alpha A)^{T}=\left[\begin{array}{cc}\alpha a&\alpha c\\ \alpha b&\alpha d\end{array}\right]=\alpha A^{T}

となります。

その3

 (A^{T})^{T}=A

転置して転置すればもとに戻りますよね。

その4

 (AB)^{T}=B^{T}A^{T}

これは明らかでないので、頑張って証明します。

はじめに注意ですが、いちいち行列の形で書くのは面倒なので、行列Ai行目、j列目の成分をa_{ij}と書くことにします。こうすると表記が簡単になるので。では、証明をすすめます。まず、

 \displaystyle (AB)_{ij}=\sum_{k=1}^{n}a_{ik}b_{kj}

とかけます。そして、これを転置するとi,jがひっくり返るので

 \displaystyle (AB)^{T}_{ij}\\=\sum_{k=1}^{n}a_{jk}b_{ki}\\=\sum_{k=1}^{n}b_{ki}a_{jk}\\=\sum_{k=1}^{n}(b^{T})_{ik}(a^{T})_{kj}\\=(B^{T}A^{T})_{ij}

となります。ですから(AB)^{T}=B^{T}A^{T}が成り立ちます。

著者:安井 真人(やすい まさと)