逆行列

逆行列

実数には逆元が存在します。この逆元と同様に行列にも逆元という考え方があります。それが、逆行列です。ここでは逆行列についての定義と求め方を解説します。

逆行列とは

0や1は特殊な数です。なぜなら

 a+0=a,\\ a\times 1=a

というように0はいくら足しても意味が無いし、1はいくらかけても意味がありません。こういう数を単位元といいます。つまり、足し算の単位元は0で掛け算の単位元は1です。そして、

 \displaystyle 3+(-3)=0,\\4\times\frac{1}{4}=1

というように、実数には演算したら単位元になる実数があります(0の掛け算は別です)。これを逆元といいます。aの足し算における逆元は-aで、掛け算における逆元は\frac{1}{a}となります。

 

以上のことを行列の掛け算で考えます。すると単位元は単位行列Iであることがわかります。実際に

 AI=A

となります。逆元も実数の積と同様に行列によっては存在します。つまり

 AB=BA=I

のような行列Bが存在するケースがあり、Aの逆元と呼びます。そして

 B=A^{-1}

とかきます。

逆行列が存在しない行列もあります。その例に一つがすべての値が0の行列です。

以下に逆行列の定義をまとめます。

逆行列

 Aの逆行列とは

 AB=BA=I

が成り立つ行列のことであり、

 B=A^{-1}

と表す。

では試しに逆行列を求めてみましょう。

 A=\left[\begin{array}{cc}2&1\\5&3\end{array}\right]

の逆行列を求めよ。

とりあえず

 A^{-1}=\left[\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right]

とおいてかけると

 AA^{-1}\\=\left[\begin{array}{cc}2&1\\5&3\end{array}\right]\left[\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right]\\=\left[\begin{array}{cc}2a+c&2b+d\\5a+3c&5b+3d\end{array}\right]=I

なので、

 2a+c=1,\\2b+d=0,\\5a+3c=0,\\5b+3d=1

となります。これを計算すると

 A^{-1}=\left[\begin{array}{cc}3&-1\\-5&2\end{array}\right]

が得られます。またこの行列A^{-1}

 A^{-1}A=\left[\begin{array}{cc}3&-1\\-5&2\end{array}\right]\left[\begin{array}{cc}2&1\\5&3\end{array}\right]=I

が成り立ちます。よって

 AA^{-1}=A^{-1}A=I

が成立するので

 A^{-1}=\left[\begin{array}{cc}3&-1\\-5&2\end{array}\right]

Aの逆行列です。

著者:安井 真人(やすい まさと)