ベクトル空間の例

ベクトル空間の例

前回ベクトル空間について解説しました。

今一度、ベクトル空間の定義を確認してください。

ベクトル空間

集合\mathbf{V}を考える。そして、この集合の元を

 \mathbf{x},\mathbf{y},\mathbf{z}\in\mathbf{V}

とする。集合\mathbf{V}がベクトル空間であるとは以下の2つが成り立つことをいう。

【ベクトル空間の条件1】

  1. (\mathbf{x}+\mathbf{y})+\mathbf{z}=\mathbf{x}+(\mathbf{y}+\mathbf{z})
  2. \mathbf{x}+\mathbf{y}=\mathbf{y}+\mathbf{x}
  3. 零ベクトルと呼ばれる特別な元\mathbf{o}がただひとつ存在して、\mathbf{V}のすべての元\mathbf{x}に対して\mathbf{o}+\mathbf{x}=\mathbf{x}が成り立つ。
  4. \mathbf{V}の任意の元\mathbf{x}に対して、\mathbf{x}+(-\mathbf{x})=\mathbf{o}となる元-\mathbf{x}が存在する

が成り立つ。

【ベクトル空間の条件2】

さらに、\mathbf{V}の任意の実数\alphaに対して、 \mathbf{x}\alpha倍と呼ばれる\mathbf{V}の 元\alpha\mathbf{x}が存在し

  1. (a+b)\mathbf{x}=a\mathbf{x}+b\mathbf{x}
  2. a(\mathbf{x}+\mathbf{y})=a\mathbf{x}+a\mathbf{y}
  3. (ab)\mathbf{x}=a(b\mathbf{x})
  4. 1\mathbf{x}=\mathbf{x}

が成り立つ。

今回は、この定義にあう例を紹介します。

ベクトル空間の例(原点を通る直線上の点)

A=\{(x,y)|y=2x\}という集合はベクトル空間です。

ベクトルの和

定義にしたがって確認していきます。

まずはベクトルの和を\mathbf{x_{1}}=(x_{1},y_{1}),\mathbf{x_{2}}=(x_{2},y_{2})に対して

 \mathbf{x_{1}}+\mathbf{x_{2}}=(x_{1}+x_{2},y_{1}+y_{2})

とします。この点はAの元となります。

実際に、任意の点(x_{1},y_{1}),(x_{2},y_{2})において

 y_{1}=2x_{1},y_{2}=2x_{2}

が成り立つので、

 y_{1}+y_{2}=2(x_{1}+x_{2})

となります。よって、

 (x_{1}+x_{2},y_{1}+y_{2})\in A

がいえます。さらに、\mathbf{x_{1}}=(x_{1},y_{1}),\mathbf{x_{2}}=(x_{2},y_{2}),\mathbf{x_{3}}=(x_{3},y_{3})\in Aに対して

 (\mathbf{x_{1}}+\mathbf{x_{2}})+\mathbf{x_{3}}\\=((x_{1}+x_{2})+x_{3},(y_{1}+y_{2})+y_{3})\\=(x_{1}+(x_{2}+x_{3}),y_{1}+(y_{2}+y_{3}))\\=\mathbf{x_{1}}+(\mathbf{x_{2}}+\mathbf{x_{3}}),

 \mathbf{x_{1}}+\mathbf{x_{2}}\\=(x_{1}+x_{2},y_{1}+y_{2})\\=(x_{2}+x_{1},y_{2}+y_{1})\\=\mathbf{x_{2}}+\mathbf{x_{1}}

が成り立ちます。そして、零元も\mathbf{0}=(0,0)とすれば、任意の\mathbf{x}=(x,y)\in Aに対して

 \mathbf{x}+\mathbf{0}=(x+0,y+0)=(x,y)=\mathbf{x}

となります。逆元に対しても、\mathbf{x}=(x,y)\in Aに対して、-\mathbf{x}=(-x,-y)とすれば

 \mathbf{x}+(-\mathbf{x})=(x+(-x),y+(-y))=(0,0)=\mathbf{0}

がなりたちます。逆元は任意の元に対して存在します。

スカラー倍

とりあえずここまでで、前半であとベクトル空間というにはスカラー倍のことについてのべる必要があります。

\alphaのスカラー倍を\mathbf{x}=(x,y)に対して

 \alpha\mathbf{x}=(\alpha x,\alpha y)

とします。すると、

 y=2x

が成り立つので

 \alpha y=2\alpha x

も成り立ちます。ですから

 \alpha \mathbf{x}\in A

となることがわかります。

そして、\mathbf{x_{1}}=(x_{1},y_{1}),\mathbf{x_{2}}=(x_{2},y_{2})\in A、実数\alpha,\betaに対して

 (\alpha+\beta)\mathbf{x_{1}}\\=((\alpha+\beta)x_{1},(\alpha+\beta)y_{1})\\=(\alpha x_{1}+\beta x_{1},\alpha y_{1}+\beta y_{1})\\=(\alpha x_{1},\alpha y_{1})+(\beta x_{1},\beta y_{1})\\=\alpha \mathbf{x_{1}}+\beta \mathbf{x_{1}}

 \alpha(\mathbf{x_{1}}+\mathbf{x_{2}})\\=(\alpha(x_{1}+x_{2}),\alpha(y_{1}+y_{2}))\\=(\alpha x_{1}+\alpha x_{2},\alpha y_{1}+\alpha y_{2})\\=(\alpha x_{1},\alpha y_{1})+(\alpha x_{2},\alpha y_{2})\\=\alpha\mathbf{x_{1}}+\alpha\mathbf{x_{2}}

 (\alpha\beta)\mathbf{x_{1}}\\=((\alpha\beta)x_{1},(\alpha\beta)y_{1})\\=(\alpha(\beta x_{1}),\alpha(\beta y_{1}))\\=\alpha(\beta\mathbf{x_{1}})

が成り立ちます。

最後に、1に対しても

 1\mathbf{x_{1}}=(1x_{1},1y_{1})=(x_{1},y_{1})=\mathbf{x_{1}}

が成立します。

長くなりましたが、以上のことからy=2xの点の集合はベクトル空間となります。

他の例

他に重要なベクトル空間を一つ挙げます。

 \displaystyle\frac{d^{2}f}{dx^{2}}+a\frac{df}{dx}+bf=0

が成り立つ関数f(x)の集合をBとします。

この集合に

和:(f+g)(x)=f(x)+g(x)

スカラー倍:(af)(x)=a(f(x))aは実数

を入れれば、ベクトル空間になります。試しに証明してみてください。

この例は常微分方程式を解く際に重要になります。

なぜなら、もしとある解f_{0},g_{0}がわかれば、ベクトル空間の性質からaf_{0}+bg_{0}も解になるからです。

いづれ解説するので楽しみにしていてください。

著者:安井 真人(やすい まさと)