線形写像と同型写像

線形写像と同型写像

ベクトルの関数のひとつである線形写像という特殊な写像について解説します。

写像について知らないかたは以下の記事を参照してください。

>>写像についての記事

線形写像

線形写像

線形空間\mathbf{V}から線形空間\mathbf{V^{\prime}}への写像T

 T(\mathbf{x}+\mathbf{y})=T\mathbf{x}+T\mathbf{y}

 T(a\mathbf{x})=aT\mathbf{x}

を満たすとき、T\mathbf{V}から\mathbf{V^{\prime}}への線形写像といいます。

線形写像の例

では線形写像の例をみていきましょう。

はじめに、線形空間のひとつである

 \displaystyle\frac{dy}{dx}+2y=0

の解全体の集合\mathbf{A}を考えます。ちなみに、これが線形空間であることは、この方程式の解がy_{1},y_{2},y_{3}とした際、y_{1}+y_{2}ay_{1}も解になります。

 \displaystyle\frac{d(y_{1}+y_{2})}{dx}+2(y_{1}+y_{2})=\frac{dy_{1}}{dx}+2y_{1}+\frac{dy_{2}}{dx}+2y_{2}=0+0=0

 \displaystyle\frac{d(ay_{1})}{dx}+2(ay_{1})=a(\frac{dy_{1}}{dx}+2y_{1})=a0=0

また、

結合法則:(y_{1}(x)+y_{2}(x))+y_{3}(x)=y_{1}(x)+(y_{2}(x)+y_{3}(x)),

交換法則:y_{1}(x)+y_{2}(x)=y_{2}(x)+y_{1}(x)

 (a+b)y_{1}=ay_{1}+by_{1}

 a(y_{1}+y_{2})=ay_{1}+ay_{2}

 (ab)y_{1}=a(by_{1})

 1y_{1}=y_{1}

が成り立ち、零ベクトルo(x)=0y_{1}の逆ベクトル-y_{1}も存在します。よって、線形空間となります。そして、方程式の解は

 \displaystyle\frac{dy}{dx}=-2y\Leftrightarrow \frac{dy}{y}=-2dx\Leftrightarrow \ln y=-2x+C\Leftrightarrow y(x)=A\exp(-2x)

となります。

 

線形写像の例を示したいので、もう一つ線形空間を用意します。

その線形空間は実数の集合\mathbf{R}です。実数の集合は線形空間になるので、一度自力で証明してみてください。

 

では、線形写像の例をあげます。それは

 F:\mathbf{A}\rightarrow \mathbf{R}:y(x)=A\exp(-2x)\rightarrow A

という写像Fです。実際に、A_{1}\exp(-2x),A_{2}\exp(-2x)に対して

 F(A_{1}\exp(-2x)+A_{2}\exp(-2x))\\=F((A_{1}+A_{2})\exp(-2x))\\=A_{1}+A_{2}\\=F(A_{1}\exp(-2x))+F(A_{2}\exp(-2x))

 F(a(A_{1}\exp(-2x)))\\=F((aA_{1})\exp(-2x))\\=aA_{1}\exp(-2x)\\=aF(A_{1}\exp(-2x))

がなりたつことがわかります。

よって、写像Fは線形写像となります。

同型写像

同型写像

\mathbf{V}から\mathbf{V^{\prime}}への線形写像Tが全単射であるときT\mathbf{V}から\mathbf{V^{\prime}}への同型写像といいます。そして、\mathbf{V}\mathbf{V^{\prime}}同型対応であるといいます。

まず、全単射の意味がわからないかたは以下の記事を参照してください。

>>全単射の解説記事

線形写像の例で述べた写像Fは同型写像です。まず、全射であることは

 T(\mathbf{A})\supseteq \mathbf{R}

を示せばいいです。そこで、任意の\mathbf{R}の元Aをとって、それがT(\mathbf{A})の元であることを示します。これを示すには\mathbf{A}の元A\exp(-2x)をとれば

 T(A\exp(-2x))=A

となるので、AT(\mathbf{A})の元であり、全射であることが証明されました。

 

単射であることは任意の\mathbf{A}の元A\exp(-2x),B\exp(-2x)に対して、T(A\exp(-2x))=T(B\exp(-2x))\Rightarrow A=Bであることを示せばいいです。実際に、定義から

 T(A\exp(-2x))=T(B\exp(-2x))\Rightarrow A=B

と計算できます。

 

よって、Tは同型写像となります。

この例から、\displaystyle\frac{dy}{dx}+2y=0の解全体と一次元ベクトル(実数)の集合は一対一で対応することがわかります。

つまり、\displaystyle\frac{dy}{dx}+2y=0の解全体も実数も基本的に同じ性質であるということができます。

微分方程式の解とベクトルが同じなんて思いもしなかった方もおおいと思います。

これが一般化することで本質的には同じということになるのですね。

一般化の素晴らしさがわかっていただければ幸いです。

著者:安井 真人(やすい まさと)