位置エネルギー
カテゴリ:力学

質点のエネルギーの一つに、運動エネルギーがあることを学びました。
もしも質点が外界から位置に依存した力(例:重力)を受ける場合、位置エネルギーという概念を導入できます。
ここでは、重力の位置エネルギーを導入します。
そして、質点の運動エネルギーと位置エネルギーの関係性を示す法則である「エネルギー保存則」を導きます。
バネによる仕事
前回、仕事
という量を導入しました。
今回はバネによる仕事を考えます。以下のように、バネ定数のバネにつながった質量
の質点を考えます。
そして、原点は自然長の位置に設定します。
まず、バネが質点へ与える力は
なので、バネが質点へ与える仕事は
となります。
これより、バネによる仕事は始点と終点
で決まることがわかります。
保存力では基準位置により各位置の仕事を定義できる
保存力の場合、基準点に対する仕事というものを定義できます。
例えば、質点が地点AからBへ、ある保存力のもと移動したとします。
このとき、保存力が質点へ与えた仕事をとします。
すると、保存力は経路によらないので、A→基準点O→Bという経路をとってもいいわけです。ですから、
となります。
確かに、基準点に対して各地点での仕事
を定義できるのがわかります。
が成り立つことについての補足です。
保存力は仕事が位置に依存するので
です。また、保存力は経路によらないので
となります。
地点から
の仕事を計算します。
時刻0では地点、時刻
では地点
に質点がいるとします。
すると、仕事は
となります。
ここで出てくる積分ですが、合成関数の微分より
となることを使っています。
位置エネルギー
ここで、「というのは、地点OからXまで行く過程にバネ(保存力)が質点にする仕事(与えるエネルギー)」ということになります。
逆に、質点の立場から考えると、「は質点がバネ(保存力)から得るエネルギー」ということになります。
さらに言い換えると、「は質点がバネ(保存力)へ与えるエネルギー」ということになります。
よって、は質点が保存力へ預けたエネルギーと考えることができます。このことと、この値は位置のみに依存することから
を位置エネルギーと読んでいます。
原点から位置へのバネが質点へ与える仕事は
でした。よって、位置エネルギーは
となります。
鉛直上向きにz軸をとると、原点からまでに質点に重力が与える仕事は
なので、位置エネルギーは
となります。
運動エネルギーと位置エネルギー
では、運動エネルギーと位置エネルギーの関係を考えていきます。
運動方程式より得られた式
は保存力のみを考えれば
となります。つまり、
保存力のみが質点にかかっている場合
(質点の運動エネルギー)+(質点の位置エネルギー)=一定
が成り立ちます。これを力学的エネルギー保存則といいます。
エネルギー保存則の応用
エネルギー保存則は、いちいち運動方程式を解かなくても、質点の運動エネルギーと位置エネルギーの和を初期状態から求めることができるので便利です。
実際に、以下の問題を解くことでこのことを実感できます。
エネルギー保存則より
,
となります。
エネルギー保存則より
,
となります。
以上のようにエネルギー保存則は、非常にシンプルできれいな式です。そのこともあって、熱力学など様々なところに応用されます。
しっかり理解しておきましょう。
著者:安井 真人(やすい まさと)
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