三角比
カテゴリ:幾何学

図形の問題は中学で集中的に習います。ですから、高校でもこれ以上、図形について学ぶものがあるのかと思われるかたも多いでしょう。その指摘はごもっともで、高校では純粋に図形の問題を解くことはほとんどありません。
しかし、高校では、幾何学と解析学(グラフとか方程式とか)を組み合わせて問題を解く方法を学びます。幾何学を解析学の視点から見るととても便利です。例えば、幾何の問題を方程式にまとめて解くことができます。幾何の問題は、一種のパズルのようだと感じた方も多かったと思います。それが、解析学の視点でとくと方程式を導くことで機械的に解けるようになるのです。
幾何学を解析学にもっていくために重要なのが今回学ぶ「三角比」という概念です。三角比を学ぶことで、幾何学をsin,cos,tanという文字式へ変換することもできます。さらに、三角比は角度と距離の関係を知りたいときに便利で、ベクトルを成分にわけるときに使用します。また、三角比は球や円のような丸い空間と直交座標系を行き来する道具としても使用されます。
はじめは三角比をよく理解できないと思いますが、理解して使いこなせるようになれば多くの場面で応用可能です。ぜひ、マスターしていきましょう。
三角比の定義
では、さっそく三角比の定義を説明します。
三角比
図のようなが鋭角である直角三角形があります。この直角三角形において、
- 正弦(sine,さいん):
- 余弦(cosine,こさいん):
- 正接(tangent,たんじぇんと):
と定義します。
注意ですが、
左下に目的の角度、右下に90°を設置してください。
上の図のような配置を頭に入れておきましょう。でないと間違った値になります。あと、正弦とか余弦とかの名前は覚えなくてOKです。ここで以下のように疑問に思われたかたも多いと思います。
「どうして3つなの?組み合わせで考えれば6つあるはずでしょ?」
この疑問の通り実は6つあります。ただ、以上に述べた3つの三角比をよく使うので集中的に学ぶのです。一応、他の三角比も以下に記述しておきます。かわいそうなのでよかったら覚えてあげてください。
- 正割(cosecant,こせかんと):
- 余割(secant,せかんと):
- 余接(cotangent,こたんじぇんと):
どれも主役の逆数ですね。
【覚え方】
三角比を覚えるのはたいへんです。わたし自身なかなか覚えることができませんでした。そこで、三角比の覚え方を紹介します。以下の図のように三角比の頭文字「s」「c」「t」をイメージして覚えます。書き順の通りに「(一番目の辺)分の(二番目の辺)」とすればOKです。
単純ですが結構覚えられると思います。何回も繰り返しになりますが、三角形の左下が目的の角度、右下が90°の配置を意識して覚えてください。でないと、間違った値になってしまいます。
主な角の三角比
手計算で求められる三角比を紹介します。手計算で計算できるので、必ずと言っていいほどテストにでます。これら値は以下の正三角形と直角二等辺三角形の性質から計算できます。計算には三平方の定理が必要です。
特に覚える必要はありませんが計算できるようにしてください。
(しょっちゅう出てくるのですぐに頭に入ると思いますが)
30°
まずはじめが、30°です。この図形は1辺2の正三角形を半分に切ったものです。半分に切ったので辺PQが1でOPが2となります。また、角OQPが直角なので、OQが三平方の定理よりともとまります。そして、三角比を計算すると
となります。
45°
続いて45°です。辺OQ,QPが1で角OQPが直角な三角形です。ですから、辺OPは三平方の定理よりとなります。よって、三角比は
となります。
60°
最後が60°です。これも30°と同じです。よって、三角比は
となります。
他にも辺の長さが「3,4,5」「5,12,13」といった直角三角形もよくでてきます。この組み合わせだと直角三角形になることをしっておくと、三平方を使わずに瞬時に3辺の長さがわかり、時間短縮になります。
他の角度はどうなるか?
とか、
とかはどうやって計算するんですか?
と疑問に持たれると思います。
簡単に計算出来ない角度の場合は三角比の表を使います。
教科書の裏についていると思うので、その表から値を取得して使用します。ただし、たいていきりの良い数でないので途中で打ち切られています。
ここでは表にするのは面倒なので、以下に計算できるようにしておきました。
この計算機で値を調べて使用しましょう。
図の[latex]\sin\alpha,\cos\alpha,\tan\alpha[/latex]、[latex]\sin\beta,\cos\beta,\tan\beta[/latex]を求めてください。
三平方の定理を使って、わからない辺の長さを計算します。
[latex]PQ=\sqrt{5^{2}-3^{2}}=\sqrt{16}=4[/latex]
となります。よって、
[latex]\displaystyle\sin\alpha=\frac{3}{5},\cos\alpha=\frac{4}{5},\tan\alpha=\frac{3}{4},\\\sin\beta=\frac{4}{5},\cos\beta=\frac{3}{5},\tan\beta=\frac{4}{3}[/latex]
が得られます。
この問題は、将来、ベクトルを[latex]x,y[/latex]成分に分ける際に使用するのでできるようになっておきましょう。
[latex]x=5\sin 33^{\circ}=5\times0.5446=2.723,\\y=5\cos 33^{\circ}=5\times0.8387=4.1935[/latex]
33°の正弦と余弦は三角比の表から取得します。
【なぜsin,cos,tanが主役なのか?】
sec,cosec,cotがなぜ重点的に教えられないのかについて考えていきましょう。単純に考えると利用頻度がsinとかのほうが多いからだと想像がつきます。では、どのような場面でsinなどが使われるのでしょうか?まず、sinとcosに関しては極座標と直角座標の変換でよく使われます。例えば、以下の様な半径[latex background="ffffca"]r[/latex]で[latex background="ffffca"]x[/latex]軸から角度[latex background="ffffca"]\theta[/latex]の位置に点があったとします。
このとき、直角座標ではsin,cosを使えば
[latex background="ffffca"](r\cos\theta,r\sin\theta)[/latex]
と書くことができます。問題2と同じですね。この極座標と直角座標の変換でよくsin,cosを使用します。では、もしcosec,secを使ったらどうなるでしょうか?実際にcosec,secを使うと
[latex background="ffffca"]\displaystyle\left(r\frac{1}{{\rm cosec}\theta},r\frac{1}{\sec\theta}\right)[/latex]
となります。逆数なので書くのが面倒ですね。あと、もじ座標が(1,0)とかだとcosec,secでは表現できません。secが無限大にならないとだめですね。sinの場合は0にすれば表示できます。以上のことから
cosec,secでは極座標と直交座標をうまく変換できない
というデメリットがあります。このデメリットは大きいです。
では、cotはどうでしょうか?じつをいうとcotもtanも主役はどちらでもいいとわたしは思っています。というのも、tan自身あまり使用することがないからです。せいぜい木の高さを計測するのに使うかもしれない程度です。例えば、以下の図のように木があれば、木との距離[latex background="ffffca"]d[/latex]と角度[latex background="ffffca"]\theta[/latex]がわかれば
[latex background="ffffca"]d\tan\theta[/latex]
と高さを計算できます。もし、これが[latex background="ffffca"]\cot\theta[/latex]なら逆数となるので表記が不便です。だからtanをよく使うのかもしれません。それと、tanの場合だと角度が0の場合は0になりますが、cotの場合は無限大です。このことも関係するのかもしれません。
以上まとめると
sin,cosは座標変換で使うので大切だ
ということです。sin,cosはしっかり勉強しておきましょう。
- 三角比にはsin,cos,tanがある
- 主要な角度30°、45°、60°の三角比は書き出せるようにしておく
- 主要でない角度の三角比は計算機で求める
著者:安井 真人(やすい まさと)
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