加法定理
カテゴリ:幾何学

三角比を習うと多くの公式に圧倒されます。例えば、
といった感じで非常に多くの公式が教科書に列挙されています。もっと公式をあげようと思えばできますが、やめておきます。これらの公式をすべて暗記すると思うと嫌になるでしょう。しかし、安心してください。これらの公式の暗記は不要です。なぜなら、これらの公式は加法定理と呼ばれる公式でまとめることができるからです。加法定理は、数Ⅰでは教わらず、数Ⅱで習います。たくさん覚えるのは時間の無駄なので、ここで加法定理を習得しておきましょう。
sinとcosの関係
加法定理の説明に入る前にウォーミングアップとして公式
sinとcosの関係
・・・①
・・・②
について解説します。この公式はと
は中身である
を
と90°ずらしただけの違いで、基本的に似ていることを示しています。
図のような単位円を考えます。そして4点を考えます。三角形OAPと三角形QBOは、OQとOPが等しく両端の角が等しいので合同です。
よって、
となり
が得られます。ここではは第一象限の角としましたが第2-4象限でも同じように証明できます。
加法定理
などを
で表す定理を加法定理といいます。加法定理を使えば、定理①②も簡単に計算できるようになります。
教科書には定理①②に付け加え、いろいろな公式がのっています。なんども言いますが、加法定理を知っていればどれも覚える必要はありません。加法定理はとても便利な公式です。
加法定理の内容と証明
ではさっそく加法定理について解説します。以下が加法定理です。
加法定理
・・・(A)
(覚え方:さいたコスモス、コスモスさいた)
・・・(B)
(覚え方:コスモスコスモス、さいたさいた)
・・・(C)
(覚え方:いちひくタンタンぶんのタンぷらすタン)
覚え方は無茶苦茶ですが,声に出して覚えましょう。あと、覚えるのは(A)と(B)だけでOKです。(C)はから簡単に導けれます。それから、
のところは符号がマイナスなので気を付けましょう。あってるかチェックしたい場合は具体的な値を
に代入して確かめましょう。たとえば、
なので、
であっているな、と確認できます。
【(B)の証明】
では公式を証明します。図のように単位円周上に4点
があります。二辺とその間の角が等しいので、三角形OAQと三角形ORPが合同になります。
よって、
であり
、
なので
となります。
【(A)の証明】
つぎはです。さきほど証明した。
・・・①
・・・②
を使います。ここでを
で置き換えます。すると
となります。これに先ほど証明した加法定理(B)を使えば
となり、さらに加法定理(B)と定理②を使えば
が得られます。よって
が導かれます。
【(C)の証明】
証明した公式(A)(B)を使えば
が得られます。
様々な公式を加法定理から導く
教科書には以下の様な定理がのっています。
三角比に関する公式
,
これらの定理は加法定理から導くことができます。では、実際に導いてみましょう。
、
ここで、は+無限大なので
となります。よって、
- 加法定理を覚えておけば、三角比に関する多くの公式は覚えなくていい
- sinの覚え方:咲いたコスモス、コスモス咲いた
- cosの覚え方:コスモスコスモス、咲いた咲いた(符号はマイナス)
- tanの覚え方:いちひくたんたん分のたんプラスたん
著者:安井 真人(やすい まさと)
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