ベクトル空間の例
カテゴリ:線形代数

前回ベクトル空間について解説しました。
今一度、ベクトル空間の定義を確認してください。
ベクトル空間
集合を考える。そして、この集合の元を
とする。集合がベクトル空間であるとは以下の2つが成り立つことをいう。
【ベクトル空間の条件1】
- 零ベクトルと呼ばれる特別な元
がただひとつ存在して、
のすべての元
に対して
が成り立つ。
の任意の元
に対して、
となる元
が存在する
が成り立つ。
【ベクトル空間の条件2】
さらに、の任意の実数
に対して、
の
倍と呼ばれる
の 元
が存在し
が成り立つ。
今回は、この定義にあう例を紹介します。
ベクトル空間の例(原点を通る直線上の点)
という集合はベクトル空間です。
ベクトルの和
定義にしたがって確認していきます。
まずはベクトルの和をに対して
とします。この点はの元となります。
実際に、任意の点において
が成り立つので、
となります。よって、
がいえます。さらに、に対して
,
が成り立ちます。そして、零元もとすれば、任意の
に対して
となります。逆元に対しても、に対して、
とすれば
がなりたちます。逆元は任意の元に対して存在します。
スカラー倍
とりあえずここまでで、前半であとベクトル空間というにはスカラー倍のことについてのべる必要があります。
のスカラー倍を
に対して
とします。すると、
が成り立つので
も成り立ちます。ですから
となることがわかります。
そして、、実数
に対して
、
、
が成り立ちます。
最後に、に対しても
が成立します。
長くなりましたが、以上のことからの点の集合はベクトル空間となります。
他の例
他に重要なベクトル空間を一つ挙げます。
が成り立つ関数の集合を
とします。
この集合に
和:
スカラー倍:、
は実数
を入れれば、ベクトル空間になります。試しに証明してみてください。
この例は常微分方程式を解く際に重要になります。
なぜなら、もしとある解がわかれば、ベクトル空間の性質から
も解になるからです。
いづれ解説するので楽しみにしていてください。
著者:安井 真人(やすい まさと)
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